介護現場は「4K」、すなわち「きつい」「汚い」「給与が安い」「希望が持てない」とされる。そんな現場の知られざる実態とは――。10年間、いわゆる「老人ホーム」で夜勤を経験した川島徹氏が執筆した書籍『家族は知らない真夜中の老人ホーム ――やりきれなさの現場から』(祥伝社)より一部抜粋し、DV夫を殺害して刑務所を出た後グループホームに来た車いす女性、竹下ミヨ子さん(48)のエピソードをお届けする。なお、プライバシー保護の観点から本文に登場する人物はすべて仮名である。

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 グループホームでは入居者同士話をすることはあまりない。

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 みんな大なり小なり認知症。相手の気持ちを察することができないので、お互い勝手に話し、会話が成りたたないのだ。だから自分の言葉を受けとめてくれるスタッフに話しかける。思えば小学1年生のようなところがあった。

 竹下さんは特にその傾向が強かった。彼女が話をするのはスタッフに対してだけだった。それも男性のわたしによく話しかけているようだった。

 が、竹下さんはわたしに卑猥なことを話したがった。イレズミ男の上村さんどころではなかった。夕食の配膳で彼女に近づいたとき、彼女の手がわたしの下腹部に触れたことがあった。