別の意味で「豊かにやろうぜ」
おおた そうなんです。勝手にしてれば子どもが勝手に体験していたものをぜんぶ奪っておいて、お金出さないと何もできないような世の中になっちゃった。
五味 そういうこと、そういうこと。旅行だって同じだよ。ふらっと旅をして、夕方になったから近くの宿に入っていって「とめてくれ」と言ってもとめてくれないよ。旅行会社みたいな産業を通さないと。そういう旅もいまではほんと難しいよ。はっきりいって、つまらない世の中になってますよね。だけど「世の中が悪い」って言い方はあんまり好きじゃない。それを受け入れちゃってるひとたちの責任だと思うな。それを選択してるんだもんな。本当に嫌なら、それを否定すれば、次のやり方が本当はあるんだよ。ただそれをみんなさぼってるから、「いやぁ、でも……」って必ず言うようね。
おおた その結果、お金のあるなしによって、どこそこに行ける子と行けない子がいるという状況において、僕らがすべきことって、何なんでしょうか。
五味 お金の問題はちょっと別だよね。二次的な問題だな。
おおた 貧富の差が広がっているのを社会としてどうすればいいのかという世界的な問題はありますが、それはそれで区別して考えなきゃいけないってことですね。
五味 体験のためにお金が必要だって、消費者のニーズを喚起するというのは、商売のやり方だから。「体験しておかないと貧しい人生ですよ」って恐怖を煽る。「青汁飲んでますか?」「コンドロイチン飲んでますか?」「保険入ってますか?」「あとで困りますよ」っていうテレビコマーシャルといっしょでしょ。その産業が品がないって話だから。翻って、別の意味で「豊かにやろうぜ」っていう感じだよね。僕のまわりはみんな豊かにやってます。それなりに。
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