――近年は税収が増えている一方、歳出も過去最大になっています。どこをカットしようと考えていますか?
玉木 2023年度は予算の“使い残し”が6.9兆円ありました。その前の年は確か11.3兆円。まずはそういった使い残しの予算をしっかり見直していくことが必要です。全体的に必要性の低い予算を積み上げて見直せば財政の健全化を進めることは可能だと思いますし、減税の財源も出てくると思います。
――年収103万円をそもそも稼げない方や年金生活者の方で、それだけだと生活が厳しい方もいらっしゃると思います。使い残している6.9兆円があれば何かできるのではないでしょうか。
玉木 今回も、住民税非課税の世帯に3万円を配ったりと、生活の厳しい方に対する給付措置は行われています。一方で日本で支援が手薄なのが、普段税金を払っている課税世帯に対する対策です。働いて税金を納めている世帯でも、今は全然生活が楽ではない。所得税控除を引き上げて手元に残るお金を増やしましょうと言っているのは「真面目に働いている納税者にもう少し報いてもいいのではないか」という思いからです。
――年収103万円の壁を仮に178万円まで引き上げると、長い目で見た場合、税収はどうなるのでしょう。
玉木 もちろん短期的な減収はありますけど、数年経つと増える部分もでてくると思います。例えば103万の壁で働くのを止めていた人がそれ以上働けるようになれば、「労働供給制約(働き手が足りない問題)」がなくなるので企業はもっと稼げるようになります。そうすれば法人税や消費税も増えるので、税収の増加効果も見込めると思います。そういうことを政府やシンクタンクの力を借りて分析をしながら、基礎控除の引き上げ額を決めていくことが重要だと思います。
「年金制度は破綻しません。破綻はしないんですが…」
――年収103万円の壁ですが、私は「社会保険の壁」も大きいと思っています。私が委員を務めていた厚生労働省の社会保障審議会の年金部会でも、第三号被保険者(会社員や公務員に扶養されている20歳~59歳の家族。主夫、主婦が含まれる)をどうするかの議論がありましたが、意見が一致せず議論が先送りになってしまいました。政治の力に期待しているのですが、年金制度についてはどうお考えですか?
玉木 たかまつさんにも期待して見ていたのですが、先送りになったのは私も残念でした。前提として言うと、年金制度は破綻しません。破綻はしないんですが、今の課題は基礎年金、国民年金だけでやっていく方の額が低すぎて、それだけでは生活が厳しいこと。難しい言葉で言うと最低保障機能が失われつつあることをどうするかです。
逆に言うと、自動調整の仕組みも入っているので年金財政そのものは全く心配がないんです。「年金制度が破綻するから保険料を払わないほうがいい」というのは正しくないので、そこはぜひご理解いただきたいなと思います。
ただ掛けた分を安心が増えていくような、そういう年金にしていくための改革は必要なので、そこはちゃんと政治が責任を持ってやっていかなければいけないなと。

