中食業者からの警告

 コメはやはり流通段階で「スタック」しているわけでなく、そもそも足りていないため仕入れ値から高騰している、と考えるのが自然である。じつは実需側の業界団体は早くからそんな警鐘を鳴らしていた。その一つが、中食業者の集まりである日本惣菜協会だ。

 中食とは、スーパーやコンビニエンスストア、惣菜店などで購入した料理を家庭に持ち返り、食べることを指す。総じてコメの消費量は減る傾向にあるものの、中食業界に限れば、共働き世帯や単身世帯の増加とともに、コメの消費も伸びてきた。

窪田新之助氏 本人提供

 ところがコメの価格高騰を受けて中食業界では販売価格を抑えるため、白飯については弁当に盛る量を減らしたり、おにぎりや寿司に使う量を減らしたりしている。「このままではますますコメの消費を減らしてしまいかねない」(同協会)。そこで中食・外食産業向けに米飯を提供する事業者の集まりである日本炊飯協会とともに、両協会の会長が8月に当時の坂本哲志農相と面談し、備蓄米の放出を要請した。だが、受け入れられることはなかった。

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 坂本農相は24年10月1日の退任会見で、「備蓄米を放出しない決断に誤りはなかった」「放出していれば、だぶつきで混乱を招いた」などと、自らの判断が誤っていたことを取り繕うような強弁をした。日本惣菜協会の清水誠三専務理事は疑問を投げかける。

「もしこの時に備蓄米を放出する判断をしていれば、これほどまで高騰することはなかったのではないでしょうか。政府は物価高騰対策を標榜しているのにもかかわらず、今回の判断は遅すぎました。結果として、消費者にも米穀業界にも負担を強いる形となっています」

※本記事の全文(約10000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(窪田新之助「コメの値段はこの秋も上がる」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

・真の要因は減反
・「高温障害」が引き金に
・B銘柄をかき集めろ
・備蓄米放出でも高値継続
・「農業ムラ」は市場もつぶした