知的障がいの弟(20歳)を持つ姉は、「私が性欲を処理してあげれば」と…

 特に、知的障がいの弟(20歳)を持つ女性・むつみ(25歳)の話が印象的だ。性欲を持て余し、人前で性器を触るなどの行動を取り始めた弟に対して、「私が性欲を処理してあげれば……」と思い悩んだ末にむつみが連絡したのが、障がい者専門風俗だった。

「最近は『きょうだい児』が社会問題として取り上げられることが増えていますよね。表沙汰になっていないだけで、むつみと同じような問題を抱えている家庭は少なくないと思うんです。ほかにも、“ホス狂い”の女性を取り上げたエピソードもあって、複合的に社会問題と向き合った作品にもなっています」(同前)

『障がい者専門風俗嬢のわたし』より ©あらいぴろよ・小西理恵/KADOKAWA

 作中では、近年問題視されるようになった“日本の性教育”にも触れている。なぜ日本は性教育が遅れているのか、どうして性の話がタブー視されるようになったのか、マンガを通して知ることができる。

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「日本の性教育は、海外に比べて遅れていると言われています。心と体について誰もが知らなきゃいけないことなのに、日本人は性の話をタブー視して避けてしまう。それは、過去に教育現場で起きた性教育の弾圧も関係しているんです。今回、そういった問題をわかりやすく伝えるためにも、専門家の方に監修してもらい、性教育の問題についても踏み込みました」(同前)

「本番行為をしているのでは」「女性が搾取されている」と批判の声も…

「障がい者の性」はもちろん、日本社会が抱える「性の問題」に真正面から向き合った内容には、刊行直後から大きな反響があった。

「障がい当事者の方やそのご家族からは、『マンガにしてくれてありがとう』という声をいただきました。障がい者専門風俗を知らない人からは『すごく考えさせられた』『自分事として考える機会になった』と言っていただけましたね。お子さんを持つ方からは『子どもと心や体について話すきっかけになった』という意見もありました」(同前)

 一方で、センシティブな内容ゆえに、批判的な声もあるという。

「風俗=売春をしていると思っている方から『本番行為をしているのでは』と勘違いされたり、『女性が搾取されている』という意見もありました。そういった声があるのはしょうがないと思うし、批判もひとつの意見として捉えています。

 ただ、ひとつ勘違いしてほしくないのは、小西さんが『自分で選んでこの仕事をしているし、仕事を楽しんでいる』ということです。彼女自身がそうおっしゃっていました」(同前)

『障がい者専門風俗嬢のわたし』より ©あらいぴろよ・小西理恵/KADOKAWA

「性」というテーマを通して、人間の「生」について深く考えさせられる本作。担当編集の中川さんは、最後に読みどころを強調してくれた。

「この作品は、障がいを持った人たちだけでなく、介護タクシーの経営者や老人ホームで働く介護士、はたまた主人公の元セフレも出てきます。さまざまな登場人物がいて、誰かしらに共感できる部分があると思うので、『いいな』と思う人物に自分を投影しながら読んでほしいです。賛否があっていいので、読者の方からいろいろな意見を聞けたら嬉しいです」

次に続く 「も、漏れてない?」“射精ができない”下半身麻痺の男性が、障がい者専門風俗嬢と初めてプレイした結果…