報道前に全員返却のカラクリ
せめてもの救いは、商品券問題が報道された時点で、すべての新人議員が返却を済ませていたことだ。そのカラクリはこうだ。
13日朝、朝日新聞が「商品券を渡されたか」「商品券のやりとりについてどう考えるか」など4項目の質問に対する回答を一回生15人の事務所に求めてきた。慌てた議員の1人が党幹事長室に連絡し、幹事長の森山裕が事態を察知した。森山は商品券をすぐ返却するよう、全員に指示。15人のうち、会食翌日に返却済みだった議員が少なくとも2人いたというが、大半は森山の指示を受けて、慌てて返したのだ。
幹事長室は官房副長官の橘慶一郎を経由して事態を石破に報告した。だが、この時点に至っても官邸の危機感は薄かった。総務省出身で官僚トップの事務担当の官房副長官である佐藤文俊や総理秘書官らが、「法的な問題点はない」とする応答要領を作成。第一報が出てすぐに、石破が自ら説明する段取りを固めた。その想定は一夜明けた14日の朝だった。あの深夜の会見は、進次郎の助言を受けて急遽予定を早めたものだった。
「法的な問題はない」と強弁した石破だったが、翌14日には「世の中の感覚と乖離した部分が大きかったと痛切に思っている」と自省の言葉を繰り返した。古くからの知人に「しばらくは池田勇人(のように低姿勢)でいくしかない」と諫められたからだ。
だが、石破は「ハンカチでも買ってね、お菓子でも買ってね、という思い」と、またもや世間の常識とズレた弁明をして、共産党書記局長の小池晃から「10万円のハンカチがありますか? 汗もふけない」と畳み掛けられ、墓穴を掘った。
※本記事の全文(約6000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(赤坂太郎「ブレる石破を支える森山のジレンマ」)。

