人間ってやっぱりすごい

 さあ、最後に−1×−1を計算してみましょうか(図4─6)。どうでしょう、それぞれの段の計算結果は、右端の数字が1となり、そこから左へとずっと9が続いていくことになりますよね。そして、この段も無限に続いていくわけですが、数字の並びは一段ずつ順に左にずれていっているため、そのパターンに従って合計することが可能です。1の位は1となり、そこから先は繰り上がりが続くので0の無限ループ。よって、−1×−1が確かに1であることが分かります。

図4─6

編 おーっ、なんかこれ、脳にある種の快感がありますね。

文 この方法の素晴らしい点は、感覚的ではなく、完全にアルゴリズミックな説明ができているというところです。

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 しかし、人間の認識能力はつくづく不思議ですよね。無限に続く数字や計算であっても、一度そのパターンを認識してしまえば、あとは「キユーピー3分クッキング」みたいに、あっという間に処理してしまう。下手なコンピュータプログラミングだったら、このような気づきはできないと思いますよ。人間ってやっぱりすごいです。

数の進化論 (文春新書 1486)

加藤 文元

文藝春秋

2025年4月18日 発売

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