「なんで数学をしなきゃいけないんだろう」「数学をやってなんのためになるんだろう」と怒りにも似た問いをかけるド文系編集者に、数学者はどう答えるのでしょうか。

 ここでは、『数の進化論』(文春新書)から一部を抜粋。「チャート式」の監修や『数学の世界史』など多数の著書で数学の魅力を広め続ける“ブンゲン先生”こと加藤文元氏(ZEN大学教授、東京工業大学(現・東京科学大学)名誉教授)が解説します。(全3回の2回目/続きを読む

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編集者(以下、編) そういえば、大人気を博した少年漫画『呪術廻戦』に、五条悟という人気のキャラがいます。彼はマイナスのエネルギーを持つ呪力同士を掛け合わせて、強力なプラスのエネルギーを生み出して敵を倒すんですよ。

加藤文元(以下、文) 妻も『呪術廻戦』を読んでいて、五条ファンですよ。「なんでマイナス×マイナスはプラスなの?」と質問されたことがあります。

©AFLO

「−1×−1=1であるとすると、全てのつじつまが合う」

編 そうなんです。学校では「マイナス×マイナスはプラスだよ」と習うけど、理由は分からないまま覚えて計算していました。今でも分かりません。

文 「−1×−1=1である」──が理解できればいいんですよね? まず、「−1×−1=1であるとすると、全てのつじつまが合う」。これが一つの考え方です。

編 え、つじつま?