マイナス×マイナスをマス目で考えてみる
文 例えば、4×4=16であることと、3×3=9であることは、どうしようもない事実として存在するわけですよね。で、4から1を引いたら3ですね。だから3×3というのは、(4−1)×(4−1)ですよね。(4−1)×(4−1)が9になるようにするためには、−1×−1は1。
編 これはさすがに私でもできますよ。カッコを開いて、16−4−4+1=9。たしかに、−1×−1=1としないと、つじつまが合いませんね。
文 完全に余計なお世話かと思いますが、このかけ算を図でも描いてみましょう(図4─3)。縦4マス×横4マス、全部で16マスのマス目があるとします。ここから横に1列(4マス)、縦に1列(4マス)を取ると、重なっている部分の1マスを1回余分に取ることになってしまうので、最後に1マスぶんを足します。この過程を式で表すと、16−4−4+1=9ですね。
編 こうやって可視化されると納得します。
文 まあでも、こんなもんで騙されないでくださいね。中学生向けの説明としては十分ですが、ここで納得して終わってしまってはダメだと思っていて。実は私、マイナス×マイナスがプラスであることを示す他の方法を知っているんです……(笑)。
編 なんですか、その不敵な笑みは……。
マイナスは10進位取り記数法にはないチョンボ
文 ちょっと長くなりますが、順番に説明していきますね。私たちは普段、10進位取り記数法で数を表しますよね。だったら、−1も10進位取り記数法で書いてしまおうというのが私の考えです。あ、「なに言ってんだ」みたいな顔をしましたね? まずは10進位取り記数法がどのような方法で求められているのか、正の数で確認してみましょう。
数はなんでもいいのですが、ひとまずa=123で設定しましょう(図4─4)。まず、1の位を求めようとすると、aを10で割った余り、つまり3になります。次に10の位ですが、aから先ほどの余り3を引いておいて、10で割ると12になる。これをa'としましょう。a'を10で割ると余りは2で、これが10の位の数になります。最後に100の位。これまでと同様、a'から先ほどの余り2を引いて、それを10で割ると1になる。これを10で割ると余りが1なので、これが100の位の数になりますね。
このように、10進位取り記数法で各位の数を求めるためには、まず10で割った余りを出して、全体からその余りを引いて10で割る、また余りを引いて10で割る、また余りを引いて……というのを繰り返していきます。
編 はい、ここまでは大丈夫です。
文 では、これを−1で実践してみましょう。そもそも、1という数字は10進位取り記数法で表されていますが、そこにマイナスという謎の記号がついてしまっているわけです。マイナスは10進位取り記数法にはない記号ですから、本来このような“チョンボ”をしてしまってはダメなんですね。チョンボと言うと、私が学生時代に麻雀狂いだったことがばれてしまいますが……。

