勤続年数が長いほど給与は上がるが…
これらを一見してわかるように、大学教員の給与は、同じ大学であっても職階や勤続年数によってさまざまであり、どの部分を切り取るかにより、給与が高いか否かは大きく変わってくる。とりわけ重要なのは勤続年数であり、同じ大学に長く勤務していれば、給与は次第に上がるので、特定の大学に早い段階で就職した准教授が、新たにやってきた教授よりも高い給料をもらっている、などという事態も生じる。
最近では「年俸制」に移行する大学も多く、筆者の大学でも一部の教員に採用されている。ちなみに一口に年俸制といっても、そのやり方は毎年の業績により大きく報酬が変化するものから、俸給表による給与相当額を、年俸として形式的に受けとるものに至るまでさまざまである。
また、日本人の平均年収は2022年段階で男性が563万円、女性が314万円、さらに言えば年収の中央値は396万円だから、大学教員の給与がことさらに安いとはいえないだろう。ちなみに2004年の国立大学法人化以前は、等しく文部科学省に所属する国家公務員であったこともあり、国立大学教員の給与は今でも大学が変わっても大きくは変わらない。だから、そろそろ年齢が60代に差しかかろうとする筆者も、京都大学における「高いほうの事例」に近い給料をもらっているので、この点については贅沢は言えない。
だが大学にはこのような「教育俸給表」に沿って給料が支払われる人々のみがいるわけではない。たとえば、非常勤講師は半期2単位、15回の授業を担当しても、せいぜい得られる報酬は20万円弱にしかすぎない。外部資金で雇用される教員たちの給与は、大学の規定ではなく、外部資金側のルールにより決まってくるので、通常、俸給表に沿って給料が与えられる人々よりも低い金額になる例も出る。 給与を「時間給」で与えられている例もあり、この場合には年間の所得は300万円台を切ることもある。何よりもある程度給与が与えられても、「テニュア」が確保できなければ、任期が切れればたちまち無職になる。こうしてみると、大学教員のお金を巡る問題のかなりの部分は、テニュアを得るまでの若い人たちと、安定した立場にいる人たちとの間の格差にあるといえそうだ。
