「医師」でも「弁護士」でもない…東大卒が最も就職している専門職

 職種の分布を、性別・世代別に示したものが図表です。男性は高年齢層ほど専門職と管理職の割合が大きくなり、最高年齢層ではそれぞれ4割強、4割弱を占めています。逆に若年層ほど技術職と事務職が多くなります。

東大卒に人気なのが「専門職」だ。このうち最も多いのが「医師」でも「コンサル」でも「弁護士」でもない、「研究者、大学教員」だった(本田由紀編『「東大卒」の研究―データからみる学歴エリート』(ちくま新書)140ページより)

 女性では高年齢層ほど顕著に専門職が多く、最高年齢層の回答者では4人に3人までを占めます。若年層では事務職が多くなります。男性との違いは、高年齢層では管理職が少なく、若年層では技術職が少ないことです。

 では、東大卒業者の中でかなりの割合を占めている「専門職」とは、具体的にはどのような仕事でしょうか。自身の現職を「専門職」と回答した人たちが、仕事内容を記述してくれた結果を分類すると、約半数が「研究者、大学教員」、1割強が会計士やコンサルタントなどの「ビジネス系専門職」、約1割が「医師」、1割弱が「弁護士」、5%が学校教員や塾講師などの「教育系専門職」という結果でした。

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 理系に限れば「研究者、大学教員」が6割を占め、逆に文系では「ビジネス系専門職」と「弁護士」がそれぞれ2割以上と多くなります。学部卒の専門職は3人に1人が「ビジネス系専門職」ですが、博士では8割弱が「研究者、大学教員」です。東京大学が総合大学であることを反映して、「研究者、大学教員」が専門とする分野も、人文系、社会科学系、自然科学系という形でバラエティに富んでいます。

 このように、性別、分野や学位によっても異なりますが、「研究者、大学教員」を中心としつつ、それ以外にも非常に多様な専門職を東京大学は社会に送り出していることがわかります。男性に多い経営者・役員というビジネスエリートだけでなく、さまざまな領域の専門エリートを東京大学は育成しており、卒業生の中でも特に女性は、東大卒という学歴資本だけではなく、それに加えて学位や資格、専門知識という武器を身につけてキャリアを築いていると言えます。

 むろん、学歴資本と専門性がかけ合わされることで、東大卒の専門職がいっそう有利になっている可能性は否定できません。それでも、東大卒の中のかなりの割合が、人生初期に身につけた学歴資本の有効性だけで勝負しようとしているわけではなく、それ以外の諸資本をも獲得し活かそうとしていることは銘記する必要があるでしょう。

次の記事に続く 「氷河期世代」でもさすがの“高収入”…学歴エリート「東大」卒業生たちの“世代別月収”