ヨシタケ 実際始めてみたら、もう1個問題が出てきて。読者の方から、「このイラストに描いてあることは土屋先生のご意見なのか」と問い合わせが来たんです。これはマズいと思って、以来、土屋先生がご自身のことを書いている回は、男性の高齢者の絵を描かないようにしました。誰が読んでもエッセイの内容と絵は別物だと分かるようにしないといけない。かといって内容から遠すぎると挿絵の意味がなくなってしまうので、ちょうどいい距離感を探りつつ……。
ネタに自信がない時は…
阿川 それをたった半日で考えるんですか? どうやって?
ヨシタケ まずタイトルと文章を読み、キーワードをいくつか出します。その上で今回描けないのはおじさんの絵だとか条件を絞り、そこに合う内容を考える。「閃いた!」ではなく、描けないものを消去法で消していくんです。絵に入る文章は最大6行。上半分がフリ、下半分がオチで、上の文章を下の文章でひっくり返すというのが基本ルールになっています。
阿川 神業ですねぇ。
ヨシタケ とはいえ毎週やっていると、上手くいく時とそうではない時があって。ネタに自信がない時は、絵を可愛くするんです(笑)。
阿川 「絵で許してちょうだい、今回は」って?(笑)
ヨシタケ そう、それができるんですよ、絵と言葉の人間には。これね、大発明で。赤ちゃんとかの絵の時は、「こいつ、自信なかったんだな」と思っていただけたら(笑)。
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ヨシタケさんの幼少期から“大学デビュー”、両親や子どもとのエピソード、現在の作風を確立するまでを阿川佐和子が聞き出したインタビューの全文は『週刊文春 電子版』および4月17日発売の『週刊文春』で読むことができる。ヨシタケさんが挿絵を担当している土屋賢二さんのエッセイ「ツチヤの口車」もあわせてお楽しみください。

