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忘れられない弟の目
別の時ですが、末期の肺ガンをフィリピンの心霊療法で治したという知人の話をしたことがあります。弟はそういうものを全然信じないのに、その日に限ってくわしく訊きたがったのです。そして、
「お前も、まず体質を根本的に変えないと、治らないかも知れんよ。西洋医学とは何か違ったことをしなかったら、駄目かも知れん」
と言うと、はっきり頷いたのです。そして私が帰ろうとしたら、わざわざ手を伸ばしてきて握手を求めました。こんなことは、滅多にないことでした。私が握り返すと、またすぐ強く握ってきました。
それはまるで、
「何とか助けてくれ」
と訴えているように感じられました。
西洋医学で治らぬものなら、無理にでも他の療法をためさしてもよかったのかもしれません。しかし、いろいろ前後の事情もあって、結局、私には何も出来ませんでした。そのせいか、すがるような目で私を見た。あの時の弟がどうしても忘れられないのです。
◆このコラムは、いまなお輝き続ける「時代の顔」に迫った『昭和100年の100人 スタア篇』に掲載されています。
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