謝罪会見以外の記者会見に出席するのは、実に久しぶりな気がする。粉飾決算にデータ改竄に品質不正。この2、3年、「記者会見といえば謝罪」と言わんばかりに、大企業トップが深々と頭を下げるシーンばかり見せられてきた。だが、今日ばかりは爽やかである。
創業者はいきなりビリオネアの仲間入り
「日本最大のユニコーン(株式未上場で企業価値10億ドル超のベンチャー企業)」とかねてから評価の高かったフリマアプリを展開する「メルカリ」が、東証マザーズに上場した。16時30分、東京駅丸の内口にある東京ステーションホテル鳳凰の間で、創業者の山田進太郎会長、小泉文明社長らが記者会見した。刺々しい空気が立ち込める謝罪会見とは打って変わって、会場は和やかなムードに包まれている。
和やかにもなろう。上場されたメルカリ株は午前11時に5000円の初値をつけ、公開価格を2000円以上上回る5300円の終値で初日の取引を終えた。株式時価総額は7170億円。今年最大のIPO(新規株式公開)だ。山田進太郎が保有するメルカリ株の価値は1100億円を超え、いきなりビリオネアの仲間入りである。
『創業者からの手紙』の封筒には直筆で「山田進太郎」
しかし、嫉妬の声はあまり聞かれない。ベンチャー経営者には「意識高い系」や「オラオラ系」など、扱いにくい人物が多いが、山田進太郎は誰からも愛される「良い人」である。今日の記者会見でも随所に「良い人」ぶりを見ることができた。まずは配られた資料に入っていた『創業者からの手紙』。封筒の裏を見ると、どこか可愛らしい筆跡で「山田進太郎」。直筆である。中を読むまでもなくキュンとくる。
メルカリは2013年に設立された従業員数1000人の若い会社である。主な事業はフリマアプリのサービス。「フリマ」とは中古品の個人間取引である。中古品の個人間取引には「ヤフオク!(ヤフー・オークション)」という巨人がおり、幾多の会社が参入しては敗れてきたが、メルカリは中古品を競りにかけるオークションではなく、出品者が自分の売りたい値段をつけ、それに納得した人が買うというフリーマーケット方式でヤフオクの壁に風穴を開けた。