過去の写真が流出し、アナウンサーを辞めようと考えた
テレビ局の社員ゆえ規律ある言動が求められる一方で、ときにはタレントのように扱われ、プライベートにまで関心が集まる。その傾向はあきらかに男性アナウンサーよりも女性アナウンサーに対してのほうが強い。こうした風潮のせいで、加藤は新人時代、アナウンサーを辞めようと考えるほど追い詰められたことがあった。高校時代に当時流行りだったギャルメイクで撮った写真が流出し、雑誌やスポーツ紙に掲載されてしまったのだ。
これには自分が恥ずかしいというばかりでなく、周囲の反応も露骨に変わって傷ついたという。何より、このことで「親の教育が悪い」と言われるようなことになれば、両親に申し訳が立たず、耐えられなくなった。ついには自分にこの仕事は無理だと思った彼女は、アナウンス室長に異動を申し出る。だが、室長は「まだ舟は出たばかりだから、もう少し続けてみたら」と言ってくれ、思い留まったという。
じつは加藤は幼い頃からアトピー性皮膚炎に悩まされてきた。食べられるものは限られ、体調や季節の変化によって肌の調子が大きく崩れることもあった。中学1年から2年の夏にかけて症状がもっとも悪化したが、その後かかった医師が処方してくれた薬のおかげでかなり改善されたという。おかげでそれまで憧れながらもあきらめていたメイクもできるようになった。先述のギャルメイクも、そのために舞い上がってしまったことも理由の一つにあったようだ。
ただ、当時、そんな娘を見かねた母親から、「お父さんがどういう思いであなたをこの学校に入学させたか、わかってるの?」と叱られたことがあった。じつは両親としては家の経済事情から本当は公立高校に行ってもらいたかったのだが、これまでアトピーでつらい思いをしてきた加藤を慮って、父親が小遣いを減らしてでも彼女には好きな学校に行かせてあげたいと言ってくれたというのだ。これを聞いて、彼女は感謝の気持ちでいっぱいになるとともに、自分が恥ずかしくなったという(前掲『あさえがお』)。
何気ない立ち居振る舞いにも気を配るように
フジの社内でも厳しく指導されることは多かったらしい。アナウンス室には電話が鳴ったらワンコール以内で出なければならないとの決まりがあり、彼女は食事の途中、受話器を取ったことがあった。このとき、箸を丼のなかに置いたまま電話に出たのを、ある先輩が見ており、「そういう箸の扱いとか、行儀の悪さはいくら隠したってテレビには映る」と叱られてしまう。以来、彼女は普段から何気ない立ち居振る舞いにも気を配るようになった。

