付き合っていた男性からの一言がきっかけで…
きっかけとは、当時付き合っていた男性からの何気ない一言だった。社会人になったばかりだった彼氏は、あるとき加藤に「君には何か魅力が足りない」「先生になるのが目標というけど、どうしてもなりたい、というふうにも見えないし」といきなり指摘したかと思うと、「たとえば、毎日違う情報を伝えるアナウンサーなんて、すごく刺激的な仕事でしょ。魅力的な女性になれるかもね」と勧めたという(加藤綾子『あさえがお』小学館、2016年)。
恋人からの助言にすっかりその気になった彼女は、アナウンサースクールに通い始めた。そのかいあって、大学3年の10月頃にはフジから内々定をもらったものの、その彼氏には同時期に浮気が発覚し、けっきょく別れたという。彼は加藤に素質を見出したというわけではなく、単にミーハーでそう言ったにすぎなかったようである。
フジの入社試験で「セクシーポーズをとってください」
ところで、加藤がかつてメディアで披露したフジの入社試験の際のエピソードが、最近になってネットで波紋を呼んでいる。ネットで俎上にのぼっているのは、加藤の過去のテレビでの発言のようだが、彼女は週刊誌の対談でも同じ話をしていた。それは、面接で「セクシーポーズをとってください」と言われたというものだ。
これに加藤はどう反応したか、彼女の発言を引用すると、《私、「えっ」と思って、スカートをつまんでちょっと上げたんですよ。私が女性の中で最初に面接を受けたんですが、あとで他の人に「ねえ、セクシーポーズ、何した?」って聞いたら、みんな言われてないんです。私が変にやりすぎてしまって、質問自体なくなっちゃったんです(笑)。会社としては軽い笑いの質問だったのに、ほんとに「ごめんなさい」みたいな(笑)》(『週刊朝日』2016年12月9日号)。対談ではこの発言の前に、面接で同じ質問を受けた先輩アナウンサーの反応について語られているので、おそらくフジではこの質問が恒例となっていたのだろう。
加藤が笑い話としてかつて語っていたものが、昨年暮れ以来、出演タレントの性加害とそれに対するフジテレビ側の対応が問題化するなかで、性加害やセクハラに見て見ぬ振りをしていた同局の体質を示す証拠として掘り返されてしまった。しかし、発言当時、メディアではとくに指摘も入らず、そのままとりあげられていたことを考えると、これは単にフジだけの問題ではないだろう。問題の本質を突き詰めるなら、女性アナウンサーについてこれまでメディアがどのように扱い、受け手である私たちはどんなイメージを抱いてきたかについても考え直さなければいけないのではないか。


