Kさんの情報に間違いはなかった。その後、テロップが次々と打たれたが、「長野県と群馬県境の山中に墜落した模様」とだけ。同じ内容の繰り返しだった。急いでカメラバッグにカメラとレンズ一式を詰め込み、編集者が差し向けた車がやってくるのを、イライラしながらいまか、いまかと待った。おおよそ2時間後、迎えにきた車に飛び乗り、中央道山梨方面へと向かった。
ラジオから流れてくるアナウンサーの淡々と読み上げる肉声が524名の、一人ひとりの名前を、途切れることなく伝えていた。
窓の外に目をやると、日航機乗客の家族を乗せ、現場へ向かっていると思われるバスが、パトカーに守られながら列を連ねて走っていた。カーテンを閉めたバスの窓に、家族の影がぼんやりと映っていた。遠ざかる高速道路灯の明かりが流れるように後ろへ消えていく。
日付は13日へ変わろうとしていた。途切れることなくラジオから流れるニュースは、依然として墜落地点が特定されず、「長野県と群馬県境にまたがる山中の模様」とだけ繰り返すのだった。
「あんたら日航は何をやっているんだ!」
中央道須玉料金所で下り、国道141号線を走って、長野県・佐久郡小海町役場へ向かった。そこにはすでに現地対策本部ができていた。役場の前の道路脇は警察車両、自衛隊、取材の車で、入る隙間もなく埋まっていた。
「どうしてまだわからねえんだよ! あんたら日航は何をやっているんだ! えー!」
ひとり興奮したA新聞の記者が、日航関係者らしい人間を見つけると、激しい罵声を浴びせながら詰め寄った。見かねた警察官が、興奮した記者の間に割って入ったが、記者はふてくされ「クソッたれ」と捨て台詞を残し、どこかへいってしまった。誰もがイライラしていた。
「申し訳ありません。申し訳ありません」と日航職員は、ただただ平身低頭の繰り返しだった。近くの草むらで鈴虫が羽をすり合せて鳴いていた。
僅かな秋の気配が感じられた。
やがて東の空が白み始めた。だが、依然として詳しい墜落地点はわからないままだった。
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