原作との“連動”がファンを惹きつける

 『名探偵コナン』の劇場版ならびにテレビアニメが、他のコミック原作作品と一線を画す点は、原作との積極的な連動にある。通常、劇場版作品やテレビアニメは、原作コミックとはある程度独立したものとして展開されることが多いが、『名探偵コナン』シリーズは、劇場版やテレビアニメが原作コミックと密接にリンクした“超メディアミックス作品”となっているのだ。

 劇場版『名探偵コナン』シリーズと原作コミックの連動は、1997年に公開された第1作『時計じかけの摩天楼』から既に始まっていた。『時計じかけの摩天楼』で犯人のミスリードのために登場したオリジナルキャラクター・白鳥任三郎は、その後原作コミックにも逆輸入という形で登場。その後の原作コミック、テレビアニメ、劇場版すべてにおいて欠かすことのできないレギュラーキャラクターとして定着した。

 他にも、2016年公開の『純黒の悪夢(ナイトメア)』に登場した風見裕也や、2017年公開の『から紅の恋歌(ラブレター)』の大岡紅葉、さらにはテレビアニメシリーズで生まれた高木渉や千葉和伸といったキャラクターが原作に逆輸入されている。劇場版『名探偵コナン』シリーズの起点から、原作コミックと劇場版は連動していたのだ。

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原作より先に映画で“ネタバレ”することも…

 こうした劇場版シリーズと原作コミックの連動は、近年より強化されている。そのターニングポイントとなったのは、2014年公開の『異次元の狙撃手(スナイパー)』だろう。本作では『名探偵コナン』シリーズにおける最重要人物のひとりであり、確固たる人気を誇るキャラクター・赤井秀一の死と、謎の大学院生として登場したばかりのキャラクター・沖矢昴にまつわる謎が、原作コミックに先駆けて開示されることとなった。原作で展開されているストーリーの根幹となる情報を、原作よりも先行して劇場版アニメで公開するというのは他に前例がないのではないだろうか。

江戸川コナンと怪盗キッド(劇場版名探偵コナン【公式】Xより)

 昨年公開の『100万ドルの五稜星』では、主人公である江戸川コナン=工藤新一と、人気キャラクターである怪盗キッドが従兄弟の関係にあることが明らかとなった。この関係性については未だに原作でも触れられていないものの、今後の原作コミックにおけるストーリーにも関わることが予想される。

 他にも細かい点では、2022年公開の『ハロウィンの花嫁』で描かれた人気キャラクター・安室透を含む警察学校組と幼少期の工藤新一の関わりなど、原作と劇場版シリーズが連動することで『名探偵コナン』シリーズの世界観が拡張し、原作ファンも巻き込んで劇場版作品が盛り上がっているのだ。