「若いスタッフをどうしたら定着させられるかが、難しい問題になっています」

 介護労働者の平均年齢は50歳に到達…若い働き手がいつかない介護業界の問題とは? ノンフィクションライターの甚野博則氏の最新刊『衝撃ルポ 介護大崩壊 お金があっても安心できない!』(宝島社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

写真はイメージ ©getty

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「見捨てられた老人ホーム」

〈施設閉鎖のお知らせ〉

 そう書かれた一枚のペーパーが都内の高齢者施設に張り出された。東京都足立区にある住宅型有料老人ホーム「J」の社長が忽然と姿を消したことを、フジテレビの番組『イット!』がスクープしたのは2024年10月だ。「見捨てられた老人ホーム」と題して連日報道していたことを覚えている方もいるだろう。報道によると、職員に給料を払わないまま社長が行方をくらませ、当時30人近くの職員が退職したという。困ったのは残された90人以上の入居者やその家族だ。

 当初の報道では施設の名前こそ伏せていたが、この施設について知り合いの介護関係者に聞くと、すぐに「J」だとわかるほど、業界内でも話題になっていたという。この施設は2023年10月にオープンしたばかりだといい、多くの老人ホーム紹介サイトで、同施設が掲載されていた。

 複数の紹介サイトでは、〈要介護度や医療依存度が高い方でもご入居できるよう万全の体制を整えています〉〈安心して過ごせる生活環境で穏やかな暮らし〉などとPRされており、清潔感があり安らげる施設という印象を抱かせるものだった。ところが実際は安心とは程遠い運営体制だっただけに、こうした紹介サイトの広告に基づいた情報は、たいしてあてにならないことを物語っている。

 さらにこの施設の運営会社は他県でも介護関連施設を経営しており、自社のホームページには、こんなキャッチコピーが躍っていた。

〈「安心した生活を送ることができる」をつくる〉

 こうした無責任な運営をしているケースは多いが、施設をめぐる問題は他にもある。