「若者の労働力不足」に悩む介護業界
「どこの施設でも、職員が高齢化しています」
そう話すのは先に記した奈良県にある特養の施設長。職員の高齢化に頭を悩ませているというのだ。とくに地方の介護施設が顕著だと施設長は語った。
「まず、人を募集しても集まらない。この辺りのコンビニを見てもらうとわかりますが、外国人のアルバイトばかりです。若い人は都心に出て行ってしまうため、街全体が若者の労働力不足に悩んでいます」
そうしたなかで、とくに重労働で低賃金のイメージが根強い介護業界に、若者が来る可能性は今後も低いと話す。
介護労働安定センターが実施した2022年度の介護労働実態調査によると、介護労働者の平均年齢は50歳に達しているという。職種別に見ると、最も平均年齢が高いのは訪問介護員で54.7歳だ。次いで看護職員が52.2歳、介護支援専門員が53.0歳と、いずれも50歳を超える結果となっている。他の職種でも40代後半から50代前半の年齢層が中心を占めており、データの上でも介護職員の高齢化は顕著だ。
「資金力のある施設では、海外に研修施設をつくって、そこで教育した外国人スタッフを自社の介護施設に連れて来るという試みをしている。また、国内に介護の学校をつくって、自前でスタッフを育てるという企業もありますが、それも稀なケースですし、他の介護施設が容易に真似をすることはできません。うちでも数年前、やっと若いスタッフが1名入ってきたので大切に育ててきたのですが、最近、辞めてしまいました。若いスタッフをどうしたら定着させられるかが、難しい問題になっています」
こうした人手不足は周辺の介護施設も同様で、とくに若い介護職が定着しないのだと、この施設長は嘆いた。
