まったく浮かれた様子はなかった。ロシアW杯初戦コロンビアに2-1で勝ち、W杯で8年ぶりの勝利を挙げた日本だが、ミックスゾーンで長谷部誠は終始厳しい表情だった。
勝負は細部に宿る――。長谷部は、大会前からずっとこのことを突き詰めてきたからだ。
「早い時間で相手が退場するというのは、前回ブラジル大会のギリシャ戦もそうだったんですけどすごく難しい。そういう中、しっかりと結果を出せたのは大きな前進だと思います。でも……この勝利は詰めないといけない部分がたくさんある」
勝ったのに、渋い表情がつづく。
「前半、早い時間でひとり退場になって先制できたところまではよかった。でも、そこからなかなかいい攻撃ができなかった」
ハーフタイムにみんなで話した修正点
数的優位は、実は怖い時間でもある。なかなか2点目を奪えず、逆にFKから同点に追いつかれた。展開的には非常にいやな流れだった。だが、ハーフタイム、長谷部が中心となって戦い方を修正した。それが功を奏して、後半はコロンビアを押し込み、後半28分、カザンのキャンプ地で再三練習をしてきたセットプレーから大迫勇也が頭で決勝ゴールを奪った。
「ハーフタイムに、ボランチが1つ前のラインに出て、サイドバックも高い位置をとって、どこで攻撃のスイッチを入れるか、スピードの変化をつけるかというのをみんなで考えてやっていこうという話をした。まぁ最悪、1-1でもいいという割り切りをしていたし、そういう中でリスクを負っていく場面とバランスを取るというのは出来ていたし、決定的チャンスも作れた。真司(香川)やサコ(大迫)はセンターバックを引っ張って深みを作る意識でプレーしてくれた。コミュニケーションという部分では実った試合かなと思いますし、セットプレーでゴールを奪えたのはポジティブな結果だと思います」
選手間でコミュニケーションを取り、攻撃の型やリズムの変化をつけることはできた。ただ、それは相手が1人少ないことを考慮しないといけない。
11対11での戦いになっていれば、長谷部と柴崎岳のダブルボランチ、そしてセンターバックの吉田麻也、昌子源もあそこまでフリーでボールを持てることはなかった。むしろ逆に相手に詰められてどう打開すべきか、苦慮していただろう。それだけに、前半の試合運びや戦い方を振り返ると長谷部は、不満気な表情を見せた。