女優をやっているかどうかは「わかんないですね」
鶴田は25年ほど前の対談で、20年後、30年後も女優をやっていると思うかと訊かれ、《わかんないですね。やってるかもしれないし、やってないかもしれない。ほかにもっと違う表現方法が見つかったとすれば、そちらに進むかもしれません》と答えていた(『週刊朝日』1999年11月5日号)。
結果からいえば、鶴田はいまなお俳優を続けながらも、ほかのジャンルの人たちと積極的に交流して、さまざまな表現を模索している。とりわけ写真は、旅に出るたびに撮っているうち、どんどんのめり込み、プロの写真家などと組んで展覧会や写真集を手がけるようになった。10年ほど前からは花の写真を撮り始めた。昨年(2024年)と今年には、自身の手になる蓮の花の写真と詩を、調香師の沙里が手がけた香りを組み合わせて展示するという試みも行っている。
俳優としては、40代以降も話題作に出演を続ける。ドラマ『マルモのおきて』(2011年、フジテレビ系)では、芦田愛菜・鈴木福演じる幼い双子と生き別れた母親を演じたのが印象深い。一昨年(2023年)のNHKの連続テレビ小説『らんまん』では印刷所の経営者夫婦を奥田瑛二とともに演じている。鶴田は若手時代、朝ドラヒロインのオーディションを何度も受けてきただけに、このときの出演には感慨深いものがあったようだ。
昨年にはWOWOWのドラマ『誰かがこの町で』で法律事務所を経営する弁護士を演じた。あるニュータウンで20年ほど前に起こった複数の事件を背景に、物語が進むにつれ、自身のある過去と向き合う決心をするという重い役どころであった。今月21日にスタートした出演ドラマ『あなたを奪ったその日から』(関西テレビ制作・フジテレビ系)も、北川景子演じる主人公が幼い娘を事故で亡くし、その事故を起こした会社の社長に復讐すべく相手の娘を誘拐するというシリアスなもので、鶴田は大森南朋演じる社長の元妻を演じる。初回では登場はなかったが、どのような演技を見せるのだろうか。
「軽やかに時代の波に乗っていきたい」
鶴田はつい最近のインタビューで「未来像は描かない」と断言し、《この激動の時代、10年後に社会やエンターテインメント業界がどう変わっているのかわからない中で、将来を想像しようがないと思うんです。だからこそ、こうあるべきというこだわりは捨てて、軽やかに時代の波に乗っていきたい》と語っている(「週刊女性PRIME」2024年12月15日配信)。
彼女のなかには“いま”しかないということなのだろう。だからといって刹那的になるのではなく、そのときどきで興味を持った人と会ったり、場所に出かけたりして新たなものを取り込み、前向きな姿勢を崩さない。最近の彼女の演技を観ていると、セリフ以外の端々からもそれぞれの役が背負ったものを感じさせられることが増えた。それもかつて語ったとおり、絶えずインプットを続け、人生を充実させているからに違いない。



