狙いやからくりが可視化されるSNS時代
松井前知事は万博の成功条件を問われて「巨額の経済効果があると試算されている」ことを挙げている。万博の成功を経済効果としてしまったらどうなるか? 最近のニュースだと「来場者数」のカウントだ。23日に100万人を突破したが、読売新聞はやや皮肉っぽく伝えた。
『大阪・関西万博の来場者100万人…うち16万人超はスタッフや報道機関・万博協会職員ら』(4月23日)
万博協会は、来場者数にAD証(関係者パス)で入場した関係者を含めて発表していると書く。最後の一文はこれだ。
「読売新聞は、AD証入場者を差し引いた一般来場者数を記事にしている」
どこか呆れてないか? もしくは「万博協会に言われるまま報道しているメディアもあるんですけどね」という皮肉にも読める。
関係者数を入れてまで発表するのは万博の成功を「巨額の経済効果」としてしまった以上、流行っている感を必要以上に出していくしかないのか? でも、そんな狙いやからくりが可視化されるのもSNS時代の特徴だ。「関係者数を入れた来場者数」と「実際の観客数」が並行して報道される奇妙な現象は今後も続くのだろう。
さて、万博が開幕したら「始まったのだから悪く言うな」「批判はやめよう」的な言説もSNSでよく見る。さらにこのあとは次の“機運醸成“も待ち受けているはずだ。
「メガイベントというのは(略)どんな形であれ、終わってしまえば、なんとなく「やってよかった」という空気ができ、それに乗じて関係者は「大成功だった(私の手柄だ)」と言い募る」(『大阪・関西万博「失敗」の本質』ちくま新書)
東京五輪もそうだった。「成功」の基準がないからいくらでも恣意的に語られてしまう。そうなる前にプロセスに対しての批評や考察があって当然だろう。それを「反万博ビジネス」と呼ぶなら、本来の「万博ビジネス」に焦りが出ている証拠ではないだろうか。
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