「不安を煽る投稿が相次いだ」

 念のために書いておくとSNSには悪意だけとか不正確な投稿もある。次の記事を見てほしい。

『大屋根リング「ゆがんでいる」…万博めぐりSNSでデマや不正確な情報、実際は梁も斜めになるよう設計』(読売新聞オンライン)

 大屋根リングの木材の梁(はり)がゆがんでいるという、不安を煽る投稿が相次いだ。しかし設計どおりなのだ。夢洲は埋め立て地のため沈下しないよう地盤を固めているが、それでも沈下した場合に建物に影響が出ないように設計していた。

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大阪・関西万博 混雑する大屋根リングの下 ©時事通信社

 ただ、この記事の読みどころは最後だった。ソーシャルメディア論の教授が「注目度が高いイベントにもかかわらず、万博協会側の公式な発信が少ないことが、真偽が定かでない情報の拡散につながっている」と指摘しているのだ。

 特に安全性にかかわる話は不信感にもつながるので「協会にはより丁寧な説明が求められる」と。実は冒頭で紹介した朝日のX分析記事でも「来場者に必要な情報提供が不十分だ」と識者が述べていた。不安や不満の反応が多いのは運営側にも問題があるのではというわけだ。

 万博協会の情報公開が問われたのは今に始まったことではない。昨年3月に夢洲では工事中にメタンガスの爆発事故が起きた。その際も情報公開の少なさが問われていた。それなのに指摘や批判を「反万博ビジネス」と言ってしまうのは驚くべき態度だ。

 そもそも入場や交通アクセスの不満、メタンガスの不安、防災と安全対策などが問われているのは「夢洲」が埋め立てられた人工島という点に帰結する。当初、府の候補地案は6か所あったが夢洲は入っていなかった。万博誘致を担った松井一郎・前大阪知事は開幕2か月前のインタビューで次のように語っている(読売新聞)。

「ベイエリアの発展は、大阪の成長には絶対に必要だ。だから夢洲を入れるよう、菅さんにお願いした」。菅さんとは当時の菅義偉官房長官のこと。ただ、万博は半年間の開催だからそれだけでは不十分だと思い、だから(カジノを含む)IRだ。(略)そうしないと夢洲の価値は上げられない」

 カジノが密接に関係していた。湾岸開発を時系列でおさらいすると昭和末に策定されたテクノポート大阪計画があった。

 その中には五輪招致もあり、大阪は2008年の招致に動いた。しかしIOC総会で北京に惨敗。そして今度はカジノ誘致構想だ。カジノ開業が遅れて万博が先になったが「万博とIRをテコに、湾岸開発を一気に前進させるという、地域政党・大阪維新の会の方針が背景にあった」(朝日新聞)のである。