ラブドールをモノではなく人間としてあの世に送る。僧侶による読経と引導を経て、この世と別れさせる真面目な儀式を請け負うサービスが「ドール葬儀社」だ。合同葬が執り行われるということで、東大阪の会場に足を運んだ。
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刀で守られ、引導を渡されるラブドール
2025年4月某日、東大阪にある閑静な住宅街で粛々と別れの儀式が執り行われた。経机を挟んで読経する僧侶と相対するのは、2体のラブドールだ。壁を背にして着座し、脚には守り刀が置かれている。
一室を改造した真っ白な空間。引導を渡される2体のドールの左右にはスタジオ常駐のドールが座っており、30分弱の葬儀の成り行きを見届けていた。当然ながら身動き、瞬きひとつしない。
これは、2020年1月にスタートした「ドール葬儀社」の合同葬の様子だ。対象は等身大のラブドール。結婚や引っ越しなど様々な事情から長年大切にしてきたラブドールを手放す人がいる。その際に単なる不要品として処分するのではなく、大切なモノとして丁寧にお別れをしたい。そうした要望に応えるサービスだ。
今回のように他のドールと一緒に行う合同葬なら、料金は1体3万3000円、単体での式を希望するなら5万5000円となり、ドールのオーナーの立ち会いも可能になる。葬儀後の解体まで手がける「エンジェルプラン」も9万9000円で提供している。いずれのコースも人気があり、全国からコンスタントに依頼が届くという。