友人から託されたドールがすべての始まり

 創設者で写真家の新(あらた)レイヤさんは、人間がラブドールになりきって写真に収まる「人間ラブドール製造所」や、望む死に様で遺体になりきる「シタイラボ」など、ユニークなサービスをいくつも展開している。

「ドール葬儀社」創設者の新レイヤさん

 その一角に「ドールのお葬式」が加わったのは、結婚を控える友人から1体のラブドールを託されたことがきっかけだった。

「式の前日に『捨てるなり何なり好きにして』と言って持ってきたんです。長いこと押し入れに入れていたみたいで、もう関節なんてボロボロでした。それで産廃業者に処分を頼むことにしたんですが、顔に足跡をつけられたりして、扱いがすごく雑でした。もう私怒っちゃって『こんなところに処分任されへん!』と再び引き取ったんです。それが始まりですね」(新さん)

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常駐ドール「リンネ」さん

 そのときのドールは新たなボディを得て、常駐ドール「リンネ」さんとなった。

 廃棄物としてのラブドールは大型の不燃ゴミとみなされる。最終処分先はゴミ処理用の埋め立て地だ。四肢や首などの部位ごとに解体し、最終的には細かく粉砕されて他の不燃ゴミと一緒に固められる。行き着く先は同じであっても過程を大切にしたい。その思いを共有してくれる産廃業者を探し、かねてから交流のあった僧侶にも協力を仰ぎ、現在にいたる。

 ちなみにドールに体液が付着していると医療廃棄物扱いとなり、処分のハードルが上がってしまう。このため新さんはボディの清掃を徹底しているが、依頼されるドールの7割は使用した痕跡がないそうだ。