月、火星、木星、そして、はるかその先へ……人類は宇宙の彼方を目指し続ける。それはなぜだろうか? 果てしない営みの背後には、〈何か〉と呼ぶほかない不思議な力がある。宇宙探査の歴史に関するさまざまなエピソードを巧みな筆致で紡ぎあげ、その〈何か〉の一端を指し示した新書ノンフィクションが、話題を集めている。
「80年代に多くの読者を魅了したカール・セーガンの名著『COSMOS』の現代版を作るのが、著者の狙いでした。宇宙に関する科学的なファクトをただ紹介するのではなく、宇宙ロケットの開発で重要な働きをしたフォン・ブラウンをはじめとする技術者たちの姿、テクノロジーの進歩にまつわる人間ドラマを描きたいと考えておられたんです」(担当編集者の坂口惣一さん)
人間を描くことで〈何か〉を手渡したい。宇宙と読者との架け橋を目指す姿勢は、本の制作過程にも現れた。
「著者の強い要望で、原稿を一旦書き終えたあと、一般の読者を集めた読書会を4度開催しました。そこからのフィードバックを受けて、図版を追加するなど内容を校了の前日まで磨き上げたんです。読書会は著者のモチベーションも上がりますし、本の熱量が参加者にどんどん伝播して、出版後に口コミが広がるベースにもなりました」(坂口さん)
内容は濃いが、中学生でも十分に楽しめる。今後、夏休みの読書感想文などでも重宝されそうだ。
2018年2月発売。初版1万7000部。現在5刷5万部