パン氏の認識を変えた“多国籍グループ”の大ブレイク

 結果、ダヒは恐喝未遂の嫌疑で懲役1年、執行猶予2年を言い渡され、グループは解散に至った。この事件がパン氏にとってトラウマとなったのか、その後Big Hitでは「女子の練習生を選ばない」というジンクスまで囁かれた。

 そんなパン氏のガールズグループに対する認識を変えたきっかけが、2018年に結成された多国籍ガールズグループ「IZ*ONE」である。「ガールズグループは管理が大変なだけで金にはならない」という認識が強かったパン氏であったが、IZ*ONEの驚異的なアルバム売上記録に心を動かされたという。

オーディション番組「PRODUCE 48」で誕生し、2018年10月から2021年4月まで期間限定で活動した12人組ガールズグループのIZ*ONE。上段の右から2番目がキム・チェウォン、下段中央がサクラ。ホ・ユンジンはメンバーに選ばれなかったものの、ビジュアルや高い歌唱力で注目を集めた ©getty

 IZ*ONEは「ガールズグループのアルバム売上は多くても10万枚が限界」という業界の常識を破り、アルバムを発売するたびに数十万枚の記録を立て、デビュー3年目の2020年には年間累積売上が100万枚を突破。「ガールズグループもお金になる」という事実を知らしめたのだ。

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伝説的なプロデューサーを迎え入れたが……

 そうして、パン氏の“鶴の一声”でHYBEの初のガールズグループ発足プロジェクトがスタートする。2019年にガールズグループ専門のレーベル「SOURCE MUSIC」をHYBEの傘下に入れると、老舗の芸能事務所「SMエンタテインメント」出身で伝説的なプロデューサー、ミン・ヒジン氏を迎え入れ、第1号ガールズグループの誕生に拍車をかける。

 しかし、IZ*ONEのメンバーだったキム・チェウォンと宮脇咲良をメンバーに入れる過程で、ミン氏とパン氏の間で意見が衝突。ミン氏は「ADOR(アドア)」という新しいレーベルで独自のガールズグループプロジェクトを進めることとなり、以後はパン氏自らがLE SSERAFIMのプロジェクトを指揮することになった。こうして2022年5月、ついにLE SSERAFIMがデビューを果たす。

「PRODUCE48」出身者を中心に構成されたメンバー

 IZ*ONEの人気メンバーで、すでに韓国と日本はもちろん、中国でも大きなファンを抱えていた宮脇咲良と、IZ*ONEでリードボーカルを務め輝く存在感を発揮したキム・チェウォン。

デビュー当初は6人グループだった。左から、カズハ、キム・チェウォン、サクラ、元メンバーのキム・ガラム、ホン・ウンチェ、ホ・ユンジン(LE SSERAFIMのインスタグラムより)

 そこに、IZ*ONEを生んだオーディション番組「PRODUCE 48」に参加しユニークな歌声と幅広い音域を披露したホ・ユンジン、SOURCE MUSICの練習生だったホン・ウンチェとキム・ガラム(=学校内暴力をはたらいていたという疑惑が浮上し、デビュー直後に脱退)がメンバーに加わった。そしてデビュー直前まで公の情報がほとんどなく、謎に包まれていた日本人メンバー・カズハが合流する。