「なぜそんなに予定調和的なことを能天気に…」

 上野 誰がその融合をやるんですか? あなたの本(『22世紀の資本主義』)では「招き猫アルゴリズム」なるものがやるとありましたが、アルゴリズムは誰かが意思決定し、誰かが評価尺度を作り、誰かが設計し、意思決定するわけですよね。それは誰がやるんですか? 

上野千鶴子氏 ©文藝春秋

 成田 最初は謎の意欲に溢れた人たち、おそらく独立小国家や一部の自治体、IT企業などが有象無象のアルゴリズムを実験していくと思います。その過程でほとんどは失敗し、どれが相対的にマシかの競争や選別、議論が続く。オープンソースソフトウェア開発の政治版・公共版のような形になるのではないかと。

 上野 ものすごく予定調和的ですね。先ほどのトランプ支持者についておっしゃったことと真逆で、個人の最適な選択が最終的には調和に至るという市場原理の“基本のキ”に対する信頼をあなたが持っておられるということなの? ちょっと驚きですね。

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 成田 いや、持ってはいないです。市場原理に対する信頼とおっしゃられているのはアダム・スミスの神の見えざる手的な話や厚生経済学の第一定理のことを指していらっしゃると思いますが、そういう調和が訪れるのは色々な条件が満たされる特殊な場合だけですから。

©文藝春秋

 上野 アルゴリズムを設計するためには、情報やツールが必要になります。それに誰が投資し、誰が管理し、誰がコントロールし、誰が判定するのかという問題が関わってきます。なぜそんなに予定調和的なことを能天気に言えるのか、私は不思議でしょうがありません。

 成田 予定調和に至ると言っているのではなく、良かれ悪しかれ既存の人間や国家・通貨を脅かしそこから逸脱する試行錯誤がどんどん起きてしまうだろう。そういう見通しを述べているだけですね。

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