境港市のバス廃止
さらに、ダイヤ改正どころか、路線がなくなることもある。
高知県が検討段階で参考にした鳥取県境港市。ゲゲゲの鬼太郎で有名な漫画家、故水木しげるさんの故郷だ。妖怪177体のブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」がある。JR境港駅に近いので、ここだけの観光なら徒歩で十分だ。港町を満喫しようと「水産物直売センター」などへ足を延ばす人には、コミュニティバス「はまるーぷバス」の利用を勧めていた。
しかし、このバスについては市民から「目的地へ時間がかかる」「本数が少ない」「JR境線との接続が悪い」といった声があった。定時運行では解決できなかったことから2025年3月31日で廃止した。
オンデマンド型バスの導入
ただ、代わりにスマートフォンの専用アプリか電話で予約を受け付けるオンデマンド型の乗り合いバス「みなとーる」を走らせ始めた。会員登録が必要だが、市外の観光客も利用できる。
境港市の担当者は「定時運行のコミュニティバスは80分に1本の運行でした。オンデマンドバスだと希望の時間に決められた乗降場所で乗り降りできます。混雑することがあり、1週間前から予約可能なので、旅行計画が決まったら、早めに予約をお願いしています」と話していた。
高知県は「オンデマンド型のバスについては、観光利用を想定していない自治体が多く、今後の検討課題」としている。
“積み残し”のリスク
他にもリスクがある。積み残しだ。
中津渓谷を通るコミュニティバスは14人乗りのワゴン車タイプだった。「これ以上大きい車両だと、道が細い奥の集落に行けなくなってしまいます」と仁淀川町の担当者は語る。
万一、大勢の観光客が乗りに来たら、積み残しが発生してしまうかもしれない。
そうした場合、別の車両を追加派遣できるかどうか。仁淀川町では「朝夕の通学・通院、買い物といった同じようなダイヤ設定で10路線を走らせなければならず、10台の車両と10人の運転手がフル稼働しています。観光客で積み残しが出るという想定までしていませんでしたが、別の車両を派遣して拾う余裕はありません」と話す。
高知県の齊藤主幹は「タクシーを利用してもらうしかないかもしれません」と考えている。
