乗客不足と地域の危機
ただ、現状としては、圧倒的に乗客が少ない。
仁淀川町役場の担当者は「観光利用もしていただけたら、空気を運ぶというような状況が改善され、運賃収入につながります。効果は町のコミュニティバスにとどまりません。列車、路線バス、コミュニティバスを乗り継いで来てもらうので、路線バスの維持につながるのです。路線バスは以前、愛媛県境まで走っていましたが、営業区間を短縮しました。これ以上短くなると、住民の利便性という面で極めて厳しくなります」と切々と訴えていた。
齊藤主幹も「『どっぷり高知旅』のキャンペーンは中山間地の振興が大命題です」と力を込める。
高知県の推計人口は2025年4月1日時点で65万人を切り、64万8313人になった。47都道府県では下位から3番目だ。
そのうちほぼ半数が県都の高知市に集中していて、中山間地の疲弊が進んでいる。
「どっぷり高知旅」は県が抱える喫緊の課題への対処策の一つなのである。
挑戦的なモデルコースの設定
まだ、PRを始めていないが、県は中津渓谷以外にも七つのコミュニティバスを使ったモデルコースを設定している。今後は順次、動画などで紹介していく予定だ。
設定したコースは挑戦的という表現がふさわしい。「このような乗り方ができるのか」という驚きのルートも含まれている。
その最たるものは、清流で知られる四万十川の源流から河口まで196kmをたどる旅だろう。2町のコミュニティバス、3社の路線バス、JR土讃線と予土線を計10回も乗り継ぎ、1泊2日が必要になる。東南アジアの三輪自動車「トゥクトゥク」のレンタカーを借りて移動する箇所もある。しかも、コミュニティバスの運行日が限られていることから「水曜出発限定」。8席の車両も使われているので「満席の場合は乗車できない」という過激さだ。
本当に最後までたどり着けるだろうか。どんな旅になるだろう。機会があったらチャレンジしてみたい。
撮影 葉上太郎
