負のループによって寂しさが加速する

私たちは「居合わせなければ」「時間を共有しなければ」と恐怖しながら生きていますが、その感情にはFOMOという名前がついている。そのとき冷静に認識すべきなのは、FOMOに駆られてSNSにアクセスするとき、私たちは進んで負のループに入り込もうとしているということです。

言い換えると、必死に情報を入れたり、流れの早いコミュニケーションに追いつこうとしたりすることは、不安を解消するものではないのです。

Instagramが恐怖をやわらげてくれるとしても、そもそもの不安を生み出しているのがInstagramにほかならないわけです。だから、寂しさ対策としてSNSに訴えるのは、二日酔いがつらいから迎え酒を飲むみたいなやり方なんですね。

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居合わせることの価値の高まりがFOMOを生んでいるのだから、話題や流行や人気に乗り遅れまいとする(=できるだけ居合わせようとする)ことは、FOMOを消すどころか加速させてしまいます。

現代人からスマホを奪うのは難しい

精神科医のアンデシュ・ハンセンが紹介する社会調査によると、SNSなどを通じてソーシャルネットワークに時間を使えば使うほど幸福感は減退しています。かくして、彼は次のように述べています。

私たちはSNSによって、自分は社交的だ、意義深い社交をしていると思いがちだ。しかし、それは現実の社交の代わりにはならない。

ハンセンの指摘はもっともですが、現実の他者抜きに私たちの生活は成り立たないことを誰しも頭では理解しているはずです。もう知っているけどどうしようもないことを無頓着かつ声高に伝えてくるように感じさせるからこそ、ハンセンやデジタル・ミニマリストの主張は、どこか説教臭く思えるのでしょう。

ネットに現実のすべてがあるわけではないにもかかわらず、それ抜きにはいられないことにこそ「スマホ時代の哲学」の難しさがあります。今日の私たちが他者を求め、他者とつながろうとするとき最初にとる手段は、ネットへの接続です。