スタジアムの誰しもが固唾を飲んで見守り、そのひと蹴りが勝敗を決する——。サッカーの「PK」は極度のプレッシャーがかかる場面で行われるものです。
ノルウェースポーツ科学学校のゲイル・ヨルデット博士は長年、PKという局面が選手の心理に及ぼす影響に注目し研究を続けてきました。ここではその内容をまとめた話題の新刊『なぜ超一流選手がPKを外すのか』から一部を抜粋します。(全3回の1回目/続きを読む)
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メッシのPK成功率はどのくらい?
この10~15年間で世界最高のサッカー選手はリオネル・メッシだというのが、大方の意見だろう。では、彼のPKはどれだけすぐれているのか? それを測る基準はいくつかある。もっとも基本的な基準は、過去3~4年間にヨーロッパの上位30リーグで選手たちがPKを成功させた確率だ—78・6%だった。インテル・マイアミに移籍する前、ヨーロッパでの最後のシーズンとなった2022─2023年、メッシはフランスのリーグ・アンでプレーしていた。同リーグの選手たちの同シーズンにおけるPKの平均成功率は79・7%で、前述の基準よりわずかに高い。リーグ・アンの全選手のキャリアを通したPK成功率の平均は81・9%、とさらに高くなる。
では、メッシの成功率はどうか? 彼はデビュー以来140本のPKを蹴り、うち109本が得点に結びついた。成功率は77・9%。つまり、この10年間世界最高の選手として君臨してきたリオネル・メッシは、PKキッカーとして平均を下まわっているのだ。
