スタジアムの誰しもが固唾を飲んで見守り、そのひと蹴りで勝敗を決する——。サッカーのPKは極度のプレッシャーがかかる場面で行われるものです。

 ノルウェースポーツ科学学校のゲイル・ヨルデット博士は長年、PKという局面が選手の心理に及ぼす影響に注目し研究を続けてきました。ここではその内容をまとめた話題の新刊『なぜ超一流選手がPKを外すのか』から一部を抜粋します。(全3回の2回目/続きを読む

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“PK職人”ケインとレヴァンドフスキ

 個人的な意見を言うなら、もっとも圧倒的なPKキッカーとは、長年にわたって最高レベルで安定してPKを成功させてきた実績があり、なおかつ平均以上の成功率を誇る選手のことだろう。いわゆるPK職人だ。その一人がハリー・ケイン。これまでのキャリアでのPK成功率は86・6%(キック総数82本)、プレミアリーグでは37回PKを蹴って、その成功率は驚異の89・2%だ。もう一人が、ロベルト・レヴァンドフスキだ。主にブンデスリーガで87本のPKを蹴って、89・7%の成功率を誇る。

ハリー・ケイン ©JMPA

 ケインとレヴァンドフスキは、PKを蹴る際のプレッシャーに対処する方法こそよく似ているものの、PKを蹴る技術はまったく異なる。ケインは概して、われわれが“GK非依存型のテクニック”と名づけた方法を採る。あらかじめどの位置にどうやってシュートするかを決めてから蹴る方法だ。ほとんどの選手はこの方法を採用している。シュートする場所を選び、助走し、ねらいを定め、そこへ向かってボールを蹴るのだ。前もってシュートする場所を決めておけば、タスクをある程度まで簡潔にできる。このスタイルなら、適切にキックするのも比較的容易だ。といってもケインのようにキックするのは容易ではないが。