それでもケインは81%と高確率
といっても、仮にあなたにケインと同じぐらい強力な脚があれば、たとえGKにコースを読まれる確率を完全に克服できなくても、物事を有利に運べるだろう。ケインのPKキッカーとしてのキャリアを通して見ると、GKが誤った方向に動いた場合、ボールがゴールに入る確率は95%だ。しかもGKが正しい方に移動した場合でも、81%と高確率でゴールを決める。その場合のキッカーのPK成功率の平均は54%なのだから、かなりの高確率だ。彼のPKスキルはそれだけすぐれているのだ。
これほど質の高いGK非依存型のキックをコンスタントに繰り出せる選手はそういない。いや、例外が他にもいた。ハンガリー代表チームのキャプテン、ドミニク・ソボスライだ。2023年にリヴァプールに加入したが、それより2年前、RBライプツィヒの選手だった彼はわずか21歳でチャンピオンズリーグに出場した。グループステージ、パリ・サンジェルマン(PSG)戦でのことだ。2─1でPSGに後れを取るなか、試合後半、アディショナルタイムにライプツィヒはPKを獲得して、同点に追いつくチャンスを手にした。ソボスライはすぐさまボールをつかむと、ペナルティスポットにボールをセットした。ふと気づくとPSGのネイマールがちょっと言葉を交わしたそうな様子で近くに立っていた。
試合中にネイマールが「マジで?」
試合後のインタビューで、ソボスライはその時の会話の内容を明かした。「ネイマールから『おまえ、得点するつもりなの?』と訊かれたので、はいと答えました。『マジで?』と訊かれたので、はいと答えました。ぼくは絶対に外さないんです。そういうものなので」
ソボスライは、その自信に満ちあふれた言葉どおりのすぐれたキッカーだった。彼が強くキックしたボールは、ゴールの左下、ポストのちょうど内側に吸い込まれた。GKジャンルイジ・ドンナルンマは正しい方向にダイブしたが、シュートがあまりに強くて正確だったため、止められなかった。
