どこを狙うと一番成功率が高い?

 では、どこへボールを蹴ればいいのか? 上部をねらうのが良いと言われている。イングランドのプレミアリーグとポルトガルのプリメイラ・リーガでのPK結果を調べた研究によると、ゴール内の一番高いゾーンをねらってボールを蹴る方がいいという。また、高いところをねらってボールを打ち上げてしまうリスクは、低いところをねらってGKにセーブされるリスクよりも低いとも書かれている。

ロベルト・レヴァンドフスキ ©JMPA

 われわれが主要なPK戦のデータを検証したところ、左側にキックした時の得点率は70・7%、右側は71・2%で、(おそらくあなたの予想どおり)左右で大差はなかった。では、一番成功率が高いのはどこか? ど真ん中だ。GKがダイブしたら、さっきまで立っていたところへシュートする。われわれのデータによると、ゴール中央に蹴り込んだボールの77・9%はゴールに入る。アントニーン・パネンカは何かに気づいたに違いない。このチェコスロバキア出身のMFが、その大胆な動きでPKに革命をもたらしたのは1976年のことだ。先にGKを誘い出してダイブさせたあと、彼は優雅にボールをチップキックしてゴールのど真ん中にシュートを決めた—このスタイルのPKは今も“パネンカ”と呼ばれている(パネンカが習得するのにまる2年かけたと言われるこのテクニックのおかげで、EURO 1976の決勝でチェコスロバキアは西ドイツを下して優勝した)。GKは動こうとする傾向がある。不動の姿勢で立っていると、愚鈍に見えるか、悪い場合には勝つ気がないとの印象を持たれかねないため、人々の期待に応えて右か左に動こうとするのだ。しかし確率的には、少なくとも時々は真ん中にとどまる戦略を織り交ぜておく方が賢明だろう。

キッカーが無力感を覚える理由

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 GK非依存型のテクニックを用いる選手にとっての大きな難題は、GKが正確に動いた場合だ。実際、この点においては、PKはくじ引きみたいなものだとの意見にわたしも賛成だ。実に多くのGKが、キッカーがボールを蹴る前から、どちらに飛ぶかを決断してその方向に動く。つまりGKが正しい方向を選択することもあれば、そうでない場合もあるということだ。われわれが主要なPK戦を分析した結果、GKが間違った方向を選んだ場合—つまり左にダイブしたが、ボールが右側に飛んできた場合—キッカーが得点する確率は91%。GKが正しい方向を選んだ場合、ゴールする確率はわずか54%。ちょっと考えてみてほしい。GK非依存型のキッカーには、GKがどちらに動くかをコントロールできない。そしてGKが正確にダイブすると、あなたがPKで得点する確率が50%近く下がるのだ。こうした状況で、キッカーがしばしば無力感を覚えるのはそのためだ。