PK成功率100%を実現できたのはなぜ?

 ソボスライはどうしてそれほど自信満々なのか? 重要な試合の最終盤、得点できればチームを救えるという状況だ。ネイマールが彼の集中力を削ごうと近づいてこなくても、エリートクラスのPKキッカーですら押しつぶされそうなほどのプレッシャーがのしかかる。おまけにソボスライの対戦相手は、身長1メートル96センチの強敵GKドンナルンマだ。

スポーツ心理学の専門家であるゲイル・ヨルデット氏 ©Jimi Sweet

 当時まだ若手だったにもかかわらず、ソボスライにとって、それは初めてのPKではなかった。それ以前にも、彼はクラブの試合でPKを10回蹴ったことがあった。そしてネイマールに言ったように、すべてのPKで得点を決めていた。成功率100%だ。もちろん、PK10本では実績として少なすぎる。だがおもしろいことに、彼がキックした10本のPKのうち、8本はまったく同じところに飛んだ。向かって左側だ。PSG戦以来、ソボスライはさらに6回PKに臨んだが、そのすべてで左にボールを蹴り込んだ。

絶対的な自信を持てるメンタル

 つまり、彼が左へ蹴ったボールは14本、右へ蹴ったボールは2本ということになる。彼のコースはほぼ予測できるということだ。どこへボールを蹴るのかをあらかじめGKに教えるようなものだが、彼のキックは抜群に正確で速いため、GKがボールを止めるのはとても難しい。これら16本のPKのうちで外したのは1本だけだったが、それもGKに止められたわけではない。ポストの足下に当たったのだ。ライプツィヒでソボスライのチームメイトだったGKのエルヤン・ニーラン(現在はスペインのセビージャ所属)に、どうすればソボスライのPKを止められるのかと尋ねたことがある。「彼がどこへ蹴るかわかっていても、止めるのは非常に難しい。とにかくすばらしい右足だからね。あと、絶対的な自信があるのも大きい。メンタルが強くて、周囲が何と言おうが、GKがどんな準備をしようが、彼は影響されないんだ」とニーランは言った。

なぜ超一流選手がPKを外すのか サッカーに学ぶ究極のプレッシャー心理学

ゲイル・ヨルデット ,福井 久美子

文藝春秋

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