年俸とPK成功率の関係
その他の最新調査では、2005~2020年までのワールドカップ、EURO、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグで蹴られたPK全1711本(試合中のPKとPK戦の両方)のデータ分析がおこなわれた。この研究でも、さまざまな技術を基準に分析したところ、PKの結果にほとんど、あるいはまったく影響しないことがわかった。たとえば、選手の市場価値はまったく関係がないようだ。市場価値が3500万ユーロ以上の選手はPKの得点率が74・9%で、1000万~3500万ユーロの選手が74・8%、1000万ユーロ以下の選手が73・2%。これらの違いに統計的な有意差はない。
ところが、強いチームの選手のPK成功率は76・4%で、弱いチームの選手たちのPK成功率(71・2%)よりも高いことがわかった。しばしば実力差の大きいチームが戦うトーナメント形式のカップ戦でのPK戦の結果だけを見ると、チームの質の差はもっと明らかになる。2004─2005年シーズン~2017─2018年シーズンに開催された14種類のカップ戦でおこなわれた1067回のPK戦を調べた研究によると、いわゆる強いとみなされていたチーム(優勝候補など)のPK戦での勝利数は559回(52・5%)、弱いとみなされていたチームの勝利数は506回だった(47・5%)(訳注:この研究では試合の賭け率がイーブンで、どちらが強いともいえなかった2試合が除かれている)。後者の結果を見ると、強いチームに所属する選手の方がPKに強いように思える。とはいえ、だからといってその差をすぐさま技術力に結びつけることはできない。これらビッグクラブの選手たちはプレッシャーに強く、だからPK戦という独特の難題に対処するのがうまいのかもしれない。
メッシと能力的に劣る選手の間には差がない
つまり、サッカー選手としての全体的な技術はPKの成功に一役買ってはいるものの、ごくわずかにすぎないということだ。PKに臨むのがリオネル・メッシであろうが、能力的に劣る選手であろうが、ことPKとなるとパフォーマンスに差がなくなるように見える。
だが、PK戦を開始した途端に得点する確率が全員ほぼ同じに見えるからといって、PK戦は運次第と言えるのか? あるいは、選手たちが自身の運命をコントロールするためにできることはないのか? まずは、PK戦に対して選手たちが取っているさまざまなアプローチと、PKを理解しているように見える選手たちについて検証してみよう。
