「店燃やしたる。殺したるで!」
母親と兄の交際相手は了承し、2人で鈴村のもとを訪れた。鈴村は自分が贈ったものを全部返しに来たと知って衝撃を受け、「本気にしたのか。そんなものを持ってこられても、オレの気が変になるだけだ。持って帰れ!」と拒否した。
だが、母親は「後から返せと言われても困るから」と押し切り、鈴村の胸に現金入りの封筒を叩きつけて一喝した。
「アンタねぇ、いい加減にしぃや。愛美が迷惑しとるんよ。息子にあげたオモチャまで返せなんて、どういう男や。私も長く水商売しとるけど、アンタみたいな男見たことないわ。もうこれで終わりにしてや!」
「何で母親のアンタが出てくるんだ。これはオレと愛美の問題だろう!」
「もうその域をとっくに超えとるやろ。こんなんタダの痴話ゲンカとちゃうわ。『殺す』とか『燃やす』とか、しつこくメール送ってきて、ここに警察を呼んでもええんやで。今日だって店を閉めなアカンようになった。営業妨害や!」
「何やと!」
「事実やないか!」
その場は周囲に人がいたので収まったが、後から愛美さんに怒り狂った鈴村からメールが送られてきた。
〈ゼニ返してもらうのに、何であんなボロクソ言われなアカンのや。あんなにバカにされたのは生まれて初めてや。いちいち母親を出すな、お前いくつや?〉
愛美さんがそれでも無視していると、彼女の裸の写真を添付してこんなメールを送りつけてきた。
〈もう頭おかしくなってきたわ。人間不信になった。徹底的にやったる。店燃やしたる。殺したるで!〉
スナックにガソリンをまいた犯人
それでも無視され、完全に愛想を尽かされたことを悟ると、鈴村は失恋の悲しみで悶々となった。
「離婚までして付き合っていたのに、この仕打ちは何なんだ。金の切れ目が縁の切れ目っちゅうんか。オレが本気で殺すわけがないと思ってるんだろう。あのアマ、ナメやがって……」
事件当日、鈴村は灯油とガソリンを混ぜ合わせた混合液体を20リットル用意し、スナックへ向かった。確実に逃げ場を失わせるため、まず店の周囲の外壁に混合液体をまいた。
