ぬいぐるみにしゃべりかけていた

阿川 じゃあ中学卒業したら、すぐに働きに出ようと思っていた。

 うちの母は「近くで働いてくれ」と言ってましたけど、私は「そんなのお金にならないから、東京出て歌手になる」って。「何をバカなことを」って呆れられました(笑)。

阿川 まあ親から見ればねえ。晴れてレコード会社と契約してからも、売れない時代は長かったとか。

ADVERTISEMENT

 全然売れませんでした。だってデビュー曲、「大都会のやさぐれ女」ですよ(笑)。タイトルからして売れないと思ってました。

阿川 自分でもそう思ったんですか。

阿川佐和子さん ©︎文藝春秋

 思いました。すぐわかりますよ、売れる売れないは。

阿川 同時期で、グイグイ売れてった人もいましたか?

 いきなり売れたのは小柳ルミ子さん。オーディションにも行かずにテレビに出ていたので、野口五郎とグチグチ言ってました(笑)。当時、野口五郎といつもふたりでオーディションに行って落っこってたんです。

阿川 野口五郎さんも落ちてたの。だから今でも仲いいのね。

 私、その頃は寂しいからいつもぬいぐるみを持ってて……。

阿川 意外!! 何のぬいぐるみ?

 クマ(笑)。どこ行くにも連れてってましたね。一緒に電車に乗って「今日もダメだったね」「また頑張るね」ってしゃべりかけて。

◇ ◇ ◇

 現在配信中の『週刊文春 電子版』および5月8日発売の『週刊文春』では、研が初めて認知症のおばあちゃんを演じた現在公開中の主演映画『うぉっしゅ』の秘話や、梅沢富美男との公演の裏側、大物芸能人から学んだ「笑いのセンス」などについて語っている。

最初から記事を読む 「君の頭が白くなったら…」“唯一の女性時代考証家” 山田順子さんが語った「大河ドラマ『べらぼう』の時代考証を務めるまで」〈阿川佐和子対談に登場〉