彼女たちのドキュメンタリーを撮っているかのようでした。

──エレーヌとジョジアーヌのふたりは監督の期待に応えてくれましたか?

オゾン はい、とても。彼女たちのように経験値の高い俳優との仕事においては、細かい演技指導は必要ありません。エレーヌとジョジアーヌにも、それぞれが培った勘と経験がありますから、現場では「もっと右に」とか「もう少し早く」などとちょっとした指示をするだけでよかった。ある意味、彼女たちのドキュメンタリーを撮っているかのようでした。

 

 実際、エレーヌはいま、撮影をしたブルゴーニュのすぐ近くに住んでいます。撮影に入る前にエレーヌは私に、「この映画はまるで私の日常を描いているようね。私も毎日ミシェルのように起きて、菜園にキノコを採りに行き、ささやかな暮らしをしているわ」と言いました。

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『親密で姉妹のような関係性』を描く

──エレーヌとジョジアーヌの親密な空気感も、作品に欠かせない要素だったのではないでしょうか。

オゾン そうですね。この映画では、血縁が必ずしも一番強い絆ではないということを描きたかったので、彼女たちの親密で姉妹のような関係性はとても重要でした。

 エレーヌが演じたミシェルは、精神的に不安定になるほど実の娘・ヴァレリーとの関係性がうまくいっていません。一方、唯一ともいえる友、マリー=クロードとは姉妹のようで、マリー=クロードの息子、ヴァンサンのことも、まるで実の息子のように思っています。

 

 映画の最後にミシェルを中心に再構築した家族を描いたのは、「血のつながりというものが、ある人にとっては必ずしも最も重要なものではない」ということを示したかったからです。