『愛を読むひと』(2008年)で第81回アカデミー賞主演女優賞を獲得するなど、数々の映画賞に輝くケイト・ウィンスレットが主演・製作総指揮を務めた『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』が公開となった。
『VOGUE』誌などでトップモデルとして活躍していたリー・ミラーは、マン・レイのアシスタントとして写真家に転身。マン・レイの“ミューズ”として、パブロ・ピカソやジャン・コクトー、サルバトール・ダリらと親交を深める。しかし、やがて戦争が勃発。従軍記者として戦場へ赴くようになったリーは、次第に報道写真家となっていく。
本作は、リー・ミラーが報道写真家に転身したあとの10年を、膨大なリサーチを重ね、映画化。本作が長編映画監督デビューとなるエレン・クラス監督が、作品への思いを語った。
──ケイト・ウィンスレットから監督を任された経緯を教えてください。
エレン・クラス監督(以下、クラス) ケイトとは、私が撮影監督を務めた『エターナル・サンシャイン』(04年)で一緒に仕事をして以来、親交がありました。そのケイトが、何年も前からリー・ミラーについての映画をつくりたいと言っていて、ある日私にこう言ったんです。
「あなたが長年、テレビドラマで数多くの監督を手がけ、マーティン・スコセッシのような一流の監督のもとでセカンド・ユニットの仕事をしていることは知っているわ。でも、私と一緒に仕事をすることに興味はある?」
それを聞いて、私は「もちろん」と答えました。私たちはとても親しい友人で、ずっと一緒に仕事をしたいと思っていたのですから。ケイトも、この映画が私の初めての長編映画になることを熱望してくれました。
私がケイトから脚本を受け取ったのは2018年です。そこから私たちは、5年をかけて映画を完成させました。
──なぜケイトはリーの映画を作りたいと思ったのでしょうか。
クラス 発端となったのは、おそらくケイトが2013年にオークションでリー・ミラーの夫であるローランド・ペンローズの妹が使っていた8人掛けのアンティークテーブルを手に入れたことだと思います。テーブルのバックストーリーを聞いたケイトは、ますますリーに興味を持ったと言っていました。
ケイトは、それまでどうしてリー・ミラーのことを誰も映画にしなかったのか不思議に思っていたようです。
「歴史的にも重要で、女性としても非常に興味深い人物なのに、どうして誰も映画にしないの?」
と、よく話していました。でも、ケイトから具体的に映画の話をされたのは、ケイトがテーブルを手に入れてから5年後のことでした。