第77回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞、第97回アカデミー賞6部門ノミネートの話題作、映画『ANORA アノーラ』が劇場公開された。
“契約彼女”からの逆転!? 大富豪との結婚のリアル
貧しくも懸命に生きてきた女性が、大富豪と結婚して幸せに暮らす……という「シンデレラストーリー」の、その先の現実(リアル)を描いた物語である。
ニューヨーク、ブルックリンでストリップダンサーをしながら暮らす“アニー”ことアノーラ(マイキー・マディソン)。ある日、職場のクラブにやってきたロシア新興財閥の息子イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)を、祖母の影響でロシア語が少し理解できる彼女が接客することになる。イヴァンと意気投合したアノーラは、イヴァンがロシアに帰るまでの7日間、1万5千ドルで“契約彼女”になって、贅沢三昧の日々を過ごす。
「アメリカで結婚すればロシアに帰らなくてすむのに」と話すイヴァンに「結婚してみる?」と提案するアニー。ふたりは情熱のままに、24時間営業の教会へ駆けつけ結婚式を挙げる。
大流行した“あの映画”との共通点
この話、どこかで聞いたことはないだろうか。そう、バブル期に大流行した映画『プリティ・ウーマン』と同じ展開なのだ。
『プリティ・ウーマン』では、“ウォール街の狼”として知られる仕事一筋の実業家・エドワードが、ふとしたきっかけで出会った娼婦・ヴィヴィアンと「6日間だけのパートナー」として契約を結び、一緒に暮らしはじめる。
高級ブティックの服を身に纏い、テーブルマナーを教わり、「淑女」へと変身していくヴィヴィアン。
契約終了後は自立心が芽生え、エドワードの元を去るが、最終的には真っ赤なバラの花束を持って迎えに来たエドワードを受け入れる。「これから、この2人は幸せに暮らしていくのだろう」と感じさせるシーンで終わる。
この展開は、『プリティ・ウーマン』のもとになった60年前の映画『マイ・フェア・レディ』でも同様だ。
『マイ・フェア・レディ』の主人公、イライザは貧しい下町に生まれ育った花売り娘。言語学者のヒギンズ教授に話し方やマナーを教わり、一流のレディに生まれ変わっていく。
ヒギンズ教授は、友人のピカリング大佐との賭けで、イライザをレディにする教育をはじめるが、次第にイライザに心を惹かれるようになる。レディとしての教育を受けたイライザは、自立してヒギンズの元を去るが、映画版ではイライザがヒギンズの元へ戻ってくるシーンで終わっている。


