ジョン・ウー監督の真骨頂を見た『サイレントナイト』
まず紹介したいのは、これだ。
ジョン・ウー監督が久しぶりにアクション映画に帰ってきた! まずそれだけでも大いにめでたいのだが、さらに嬉しいのは『男たちの挽歌』『ハード・ターゲット』『フェイス/オフ』『ミッション:インポッシブル2』といった同監督の往年の名作アクション映画を彷彿とさせる、最高にカッコよくて熱いアクション場面が連発していること。しかも、その頃の切れ味を思い出させてくれる演出を披露しているのである。そのため、かつてのジョン・ウーのファンはもちろん楽しめるだろうし、近年の作品しか知らない方や全くジョン・ウー作品に触れてこなかった方は、新鮮な刺激を得られるのではなかろうか。
物語設定は、クリスマスにギャングの銃撃戦に巻き込まれて愛する息子を失った父親による復讐劇という、いかにもアクション映画向きだ。それは構成も同じ。悪党たちを倒すために調査とトレーニングを進める準備段階の前半と、その成果を活かして悪党たちを退治していく後半――と、実にシンプル。とにかく全てが復讐戦のみに焦点が絞り込まれているため、余計な枝葉に気を散らされることなく盛り上がっていく。
それは主人公の設定にもいえる。冒頭の銃撃戦で喉を撃たれて声を失っているため、セリフは全くない。そのため、その怒りや嘆きといった感情が全てアクションを通して表現されることになった。
主人公を演じるジョエル・キナマンも素晴らしい。強敵に立ち向かう際、音のない慟哭を絶えず全身から発し続けているのだ。その様が、ジョン・ウーならではの泥臭いアクションと見事に絡み合い、燃えに燃えるド迫力の闘いとして映し出されていた。
『サイレントナイト』
2025.4.11(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー 製作・監督:ジョン・ウー/脚本:ロバート・アーチャー・リン、撮影:シャロン・メール、音楽:マルコ・ベルトラミ/出演:ジョエル・キナマン、スコット・メスカディ、ハロルド・トレス、カタリーナ・サンディノ・モレノ/2022年/アメリカ/英語/カラー/ビスタサイズ/5.1CH/104分/原題:SILENT NIGHT/字幕翻訳:長岡理世/配給:クロックワークス【映倫:R15+】/©2023 Silent Night Productions, Inc. All Rights Reserved