──リサーチはどのように進めたのですか?
クラス 私たちは何年もかけて、彼女の人生について、そして入手可能なあらゆる資料や強制収容所のフィルムについて調査しました。
ドキュメンタリーはもちろん、当時の写真や映像、当時の衣服など、彼女が生きた時代とそれが彼女に与えた影響に関係するものなら何でも調べました。
でもいちばん幸運だったのは、ケイトと私が、リー・ミラーの息子、アントニー・ペンローズ氏とその娘を通じて、リー・ミラー・アーカイブに完全にアクセスできたこと。アントニーが、私たちにアーカイブの完全なアクセス権を与えてくれたおかげで、彼女の手紙や写真を全部見られたことは、映画製作に非常に重要でした。
とくに素晴らしかったのは、コンタクトシートを発見したこと。これによって、リーがどんな写真を撮ったのか、何をセレクトして印をつけたのかがわかったのです。これらの膨大な資料によって、リーがどういう人だったかを十分に理解し、自分たちがつくっていく映画の素材を蓄えていきました。
──十分なリサーチと、それを活かした構成によって、どのようなリー・ミラー像が描けたと思いますか?
クラス 本作では、戦争カメラマンとしてのリーの人生を描いただけでなく、古い慣習に縛られ、男性優位の社会の中で「女として貢献しろ」という風潮に立ち向かい、男性社会に飛び込んでいったリーの姿も描けたと思っています。そして、彼女が生きた時代、その時代に起こったこと、つまりファシズムの台頭を経験し、その結果を目の当たりにしたことにも触れることができました。
ドイツから逃げてきた経験をお持ちの私の友人のお父さんは、この映画そのものにものすごく感動したとおっしゃっていました。でも、もしかしたら若い女性は、リー・ミラーの「自立して生きる姿」に感動するかもしれません。
この映画にはたくさんの側面があるので、リー・ミラーが人々に与える影響というのは、観客一人ひとりに委ねられていると思います。
彼女に起こったことに心を動かされる人もいれば、彼女がどんな人であったかに心を動かされる人もいるでしょう。さまざまなレベルで共感できるということが、この映画の強みでもあると思っています。