大事なのは、『好きな人たちに囲まれて暮らすということ』
──血縁ではない新しい「家族」を手に入れたミシェルは幸せな最期を迎えます。人生の最期を豊かに過ごすためには、監督ご自身は何が必要だと思われますか?
オゾン 血縁にかかわらず、好きな人たちに囲まれて暮らすということがとても大事だと思っています。そして、まわりにいる、愛する人たちに、自分の持っている愛を継承していくこと。この愛の伝達も非常に重要と考えています。
フランス映画では親子の愛情は多く描かれていますが、孫と祖父母の愛情はあまり注目されません。本作で私がミシェルと孫のルカの絆を描いたのは、若さと老いの対比を描くと同時に、祖父母と孫の間にある愛の継承を描きたかったからです。
母親と子どもの間にある愛と、祖母と孫の間にある愛はまったく違うものです。祖母は孫の生活の面倒を見ているようで、実は孫によって「生きる」喜びをもらっている。そんな世代の違うふたりがお互いに助け合い、「よりよい死」に向かって精一杯生き抜く姿を、本作ではうまく描けたのではないかと思っています。
『秋が来るとき』(原題:Quand vient l'automne)
5月30日(金)新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
STORY
80歳のミシェルは、パリでの生活を終え、人生の秋から冬に変わる時期を自然豊かなブルゴーニュの田舎で一人暮らしして過ごしている。休暇で訪れる孫と会うことを楽しみに、家庭菜園で採れたにんじんをスープにし、デザートは自作のケーキ、そして秋の気配が色づく森の中を親友とおしゃべりしながら散歩する。
そんなある日、秋の休暇を利用して訪れた娘と孫に彼女が振る舞ったキノコ料理が引き金となり、それぞれの過去が浮き彫りになっていく。人生の最後を豊かに過ごすために、ミシェルが受け入れた、ある秘密とは──。
STAFF&CAST
監督・脚本:フランソワ・オゾン/共同脚本:フィリップ・ピアッツォ/出演:エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタン/フランス/2024/103分/配給:ロングライド、マーチ:©2024–FOZ–FRANCE 2 CINEMA–PLAYTIME
