後半33分だった。
右サイドからの大迫勇也のクロスが左に流れると、そのボールに追いついた乾貴士がふたたび中に折り返した。
ゴール前にいた岡崎慎司は、その瞬間、足で行こうと思った。
「クロスから自分が点を取れるところにいようと思っていて、その時も目の前にボールが来たんで、咄嗟に足を出したんですけど……」
だが、GKが前に出てきて衝突。
結果的にこれがGKを潰すことになり、逆サイドにいた本田圭佑の前にボールが転がった。岡崎が倒れている中、本田がW杯3大会連続となるゴールを決めた。
2-2の同点だ。
すぐに本田を中心に大きな選手の輪が出来た。
そして、本田が岡崎と顔を合わせるとふたりで「敬礼」ポーズを取った。本田が「やろう」と言ってきたというが、それは2015年のアジアカップ以来、3年ぶりの敬礼だった。
このゴールを見て、8年前のあるシーンを思い出した。
2010年の南アフリカW杯、デンマーク戦の3点目のシーンだ。本田がゴールを決められたが、あえてフリーの岡崎にパスを出した。その時、岡崎は本田から「ラッキー」な1点をもらい、本田は「岡崎に最初は出すつもりなかった。こういうところが自分のまだまだなところ」と岡崎に出したことを反省していた。だが、それは同級生で当時、ポジションを失い、苦しんでいた岡崎にみせた本田の優しさだったのだ。
岡崎のプレーを理解しているからこその「敬礼」ポーズ
そして、このセネガル戦の本田のゴールである。
このゴールは乾のアシストで岡崎がアシストしたわけではないが、40%ぐらいは岡崎の潰しが利いている。そのプレーを本田は理解しているからこそ岡崎に「敬礼」のポーズを一緒にやろうと伝えたのだ。
岡崎は、ゴールを決めた同級生を讃えた。
「自分が潰れたのは、アシストがつかないし……。でも、まぁ単純にあの緊張した場面でゴールを決めること、あそこにボールが転がってくるということは、あいつのW杯への強い想いがあるからだし、そういう選手っていないと思うんです。3大会でアシスト、ゴールともに結果を出せるというのはチームに本当にたくさんのものを与えるし、同級生として素晴らしいなと思います」