信頼していた店長に「900万円」を持ち逃げされたケースも
「信頼しているから」と店長に日々の売上金の管理はもちろん、会社の銀行口座の情報まですべてを共有していた居酒屋経営者のケースを紹介しよう。この店では日々の売上金の管理に加えて業者への支払いも任せていたため、店長が自由にお金を引き出せる状態だった。
それがある時、店長にすべての金を持ち出され、行方をくらまされたという。被害総額は900万円にのぼり、数カ月前から業者への支払いが滞っていたことも後から発覚した。長年にわたり勤務しており、勤務態度もいたって真面目。お客からの評判もよく、経営者は「まさかあの人が……」と肩を落としていた。いくら信頼していたとしても、経営者がこまめな確認を怠らないこと、万が一の場合、致命傷になるような情報共有は行わないことが必要だ。
ワンオペを悪用した手口も
「そんな手が!」と驚く手口もある。
飲食店のレジ回りに関するシステムを提供する企業の担当者から聞いた、ある券売機制のラーメン店の話をしよう。この店舗ではランチのピーク帯が過ぎ、他のスタッフが退勤して店長のワンオペになったところで、券売機に「故障中」と張り紙を出していた。もちろん故障などしていない。
券売機が使えない代わりに、お客は店長に直接現金を支払う。そしてそのお金はそのまま店長のポケットへ……。本部の社員が抜き打ちで店舗を巡回した際、故障していない券売機に張り紙があるのを見つけ、問い詰めたところ発覚したという。
ある居酒屋では、店内に飾っていた「熊手」が横領の隠れ蓑になっていた。熊手とは毎年11月に各地の寺社で行われる「酉の市」で商売繁盛を祈願して購入される縁起物で、七福神や鯛、小判などのモチーフの間に、本物の“万札”が折りたたまれて何枚もはさまれているデザインのものもある。

