男心をくすぐりながら指導

――男性セラピストに指導するときのコツはあるのでしょうか?

水谷 あす香さんは男心を理解して、プライドを大事にしながら指導するそうです。例えば、本職が介護職の男性セラピストには、「介護をやっている〇〇くんとしてはどう思う?」と、得意分野について質問しながら指導するとか。

あす香 男性のほうが打たれ弱いところがあるので、こちらが立ててあげながら指導しています。でも、「俺は女の扱いは分かってるから」という慢心が酷い場合は、現場でそれが出てしまうといけないので、ちょっと強めに注意するようになりました。ただ最近は模範になるような男性の講師も出てきて、やっとバランスがとれてきた気がします。

ADVERTISEMENT

――お店について、今後の展望についてはいかがですか?

あす香 必要としてくださる方がいるのなら、この場所を守り続けたいと思っています。実は、「お金を儲ける」という意味では、女性用風俗は割に合わないんです。例えば、セラピストがお客様との距離を詰めてリピートを沢山もらえば、もっとお金を稼ぐことができます。でも、「女性の悩みを聞きたい」という思いで始めたので、そういう手法は取りません。女性のお客様もセラピストも健全でいてほしいと思っています。

水谷 まだ32歳なのに、一本筋が通った考え方をお持ちですよね。あす香さんのおかげで、この漫画を描くことができたと思っています。

©深野未季/文藝春秋

――水谷先生は、作品の完結を迎えられていかがでしょうか。

水谷 今はやりきったという気持ちです。3巻まで取材を重ねる中で、「女性にとって性のハードルは、思っていたよりまだまだ高いんだな」と実感しました。性に対する興味があっても、ほとんどの女性は言えないし行動に移すことはできないのが現状なんです。

 先日、私の知り合いが女性用風俗に興味を持って、「おじさんがいい」というので50代くらいの男性セラピストを紹介したことがあったんです。すると、「好みじゃなかった、やっぱり年齢よりも顔がタイプの人がいい」と言っていました(笑)。それを聞いて、「実際に利用することで、自分の好みが分かることってあるんだな」と思いました。女性は性的な欲望を表に出しにくいですが、女性用風俗を使ってみると、自分が本当は何を求めているのか、分かるかもしれません。

次の記事に続く 【マンガ】「私には時間がない」依頼者は“セックスレス歴30年”の高齢女性…イケメン女性用風俗セラピストが直面した「71歳女性の『性のお悩み』」