「成績を上げろ」と5時間監禁される

 次にご紹介するケースはもっと深刻でした。

 受験のときには、それまでの成績に基づく「内申点」を参考にして、志望校を決めます。その内申点が出たときに、ある生徒の保護者が夫婦で学校にやってきたんです。担任の先生に話がある、ということでした。

 そこで、お2人を学校の応接室にお通ししました。

ADVERTISEMENT

「どうしました?」

「あのさぁ、この成績、どういうこと!?」

「はい?」

 父親の方は最初からケンカ腰。品の良さそうな母親は背筋をピンと伸ばしたまま、凍った表情でこちらを見ています。

「これじゃあさ、うちの子は○○高校に行けないじゃないか」

「そうですね、ちょっと……厳しいかもしれませんね」

「厳しいですよね、じゃないよ!」

 お父さんの怒りはドンドンエスカレートしていきます。

「あんた担任なんだから、息子の成績、もうひとつかふたつ、上げてくれてもいいじゃないか!」

「担任としてうちの子の進路を応援する気はないのか!」

「息子の未来を潰す気か!」

写真はイメージ ©graphica/イメージマート

 机をバンバン叩きながら怒りをぶつけてくる父親。埒が明かないと思った私は、

「学年主任の方から説明しますんで、ちょっとお待ちいただけますか?」

 と言って、席を立とうとしました。

 ところが父親は「いや、いい、行くな」と言うのです。

「いや、でも私がこれ以上説明しても、ちょっとおわかりいただけないと思うんで……」

「いや、いい、とにかくあんたに言いたいんだよ」

 そこから、また一方的な罵倒が続きます。しばらくそれを聞かされてから、

「いや、もう私が言ってもおわかりいただけないと思うので、学年主任を呼んできますので……」と言って応接室を出ようとしたんですが、「いや、行かなくていい」と、ドアを押さえられてしまいました。

「俺はあんたに文句があるんだよ!」

 ……もう、意味がわかりません。そのまま怒鳴り続けられ、時間感覚もなくなり始めた頃、

「これだけ言っても成績上がらないんだな?」

「上がりません」

「わかった、じゃあ帰るよ」

 と言ってご両親は帰っていきました。

 16時くらいに来たその保護者が帰ったのは、21時を過ぎてからでした。

 ようやく職員室に戻ったら、心配した学年主任がまだ残ってくれていました。

「大丈夫だった?」と。

「いや、助けに来いよ!」と思いましたが、もうつっこむ元気すらありませんでした。

 トイレも行けない、水も飲めないで、5時間ただ怒鳴り続けられる。こんな経験はなかなかできないと思います。

次の記事に続く 「ポニーテールは男子を欲情させる」「ブラジャーをしてないか男性教師が胸を目視で確認」元教師が語る“ブラック校則”が野放しにされる理由